2011 Fiscal Year Research-status Report
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23540213
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Research Institution | Kochi University |
Principal Investigator |
諸澤 俊介 高知大学, 自然科学系, 教授 (50220108)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2016-03-31
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Keywords | 複素力学系 / 超越整関数 / ジーゲル円板 / 特異値 |
Research Abstract |
採択された科研費で新たにパソコンを購入した。それを用いて複素力学系の数値実験を行った。特にブラシュケ積と呼ばれる有理関数について調べた。この関数は単位円周を前方不変集合に持つ。単位円周上の同相写像に、いくつかの条件を与えると、その同相写像は単位円周の近傍に拡張することができる。そのことにより適当なブラシュケ積がエルマン環を持つことはよく知られている。その条件の一つが単位円周上での写像の回転数である。ブラシュケ積を単位円周上への制限が同相写像となり、回転数がジーゲル円板を持つように定義した時のジュリア集合について考察した。ジュリア集合の点で、いかなるファトウ成分の境界にも無い点を埋蔵点と呼び、その集合を剰余ジュリア集合と呼ぶ。ジーゲル円板を持つような回転数のブラシュケ積について、その剰余ジュリア集合がアトムからなることが示せた。この結果は数理解析研究所で開催された研究集会「複素力学系の総合的研究」で発表した。この研究の発展として単位円周全体を剰余ジュリア集合に含むブラシュケ積の存在を考察している。この場合には、そのブラシュケ積の単位円周上への制限は同相写像にはならず、回転数も定義できず、回転集合を考えなければならない。 ジーゲル円板については超越整関数の場合にも考察をしている。特異有限型については、複素誤差関数の場合を調べている。ジーゲル円板が有界となる場合はあるか。すなわち、漸近値がジーゲル円板の境界上に無いような場合の回転数の存在について考察を続けている。また、特異有限型については間接超越特異値がジーゲル円板の境界に存在するかを考えている。この場合は特に (Exp(z)-1)/z の形の超越整関数について考察をしている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ブラシュケ積の単位円周への制限の回転数を考え、ジーゲル円板と関連づけて剰余ジュリア集合の性質を見ることができた。このことから、さらにブラシュケ積の剰余集合に関する問題が導きだされる。また、ジーゲル円板の回転数の考察は特異有限型整関数や特異無限型整関数のジーゲル円板の考察に役立つと思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
ブラシュケ積の剰余ジュリア集合についての考察を続ける。超越整関数のジーゲル円板と直接超越特異値と間接超越特異値について考察する。また、シュレーダー関数方程式の解である超越整関数とその定義関数のジュリア集合とを考察し、解の超越整関数の直接超越特異値と間接超越特異値について考察する。 海外での研究集会に参加し、超越整関数の力学系の専門家である Bergweiler、Rippon、Stallard らと情報交換および議論をする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成23年度の研究費から26万円ほど繰り越した。これは23年度当初科研費が3割削減され、その支給が判らなかったため、海外出張の計画が立てられなかったためである。支給が決まった時点では時間的な余裕も無く海外出張は断念せざる得なかった。平成24年4月にポーランドのベンドルボで複素力学系を含む研究費「Ergodic Methods in Dynamics」が開催されるので、その出張費用の一部に当てる。残りの科研費は、主に国内研究集会参加の出張旅費及び複素力学系関連図書の購入に充てられる。
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Research Products
(2 results)