2012 Fiscal Year Research-status Report
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23540215
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
幸崎 秀樹 九州大学, 数理(科)学研究科(研究院), 教授 (20186612)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
綿谷 安男 九州大学, 数理(科)学研究科(研究院), 教授 (00175077)
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Keywords | 作用素平均 / 作用素ノルム不等式 / 正定値関数 / 量子情報理論 / 完全正写像 |
Research Abstract |
以前連携研究者日合氏(東北大)と研究代表者は共同研究を行い, ヒルベルト空間の作用素に対する「作用素平均」とそのノルム比較に関する一般論を構築した。この理論では(ある種)スカラー平均より, 自然な形で作用素平均が構成される。また, このような二つの 作用素平均のノルム比較を行う為には, 対応するスカラー平均のある種の比として現れる関数の正定値性のチェックが必要となる。そのチェックの為の常套手段はBochnerの定理であり, その適用の為にはFourier変換の計算が必要となる。従って, 各種ノルム平均不等式の研究の為には系統的なFourier変換の計算が必要になり, 研究代表者はそのような計算, またそれに基づく正定値性の判定を実行してきた。蓄積された判定結果, および結論として得られるノルム不等式は既にMemoirs A.M.S.を始めとする数通の論文として発表されている。その後の計算で新たに加わった結果も多数あり, 整理・検討の後順次発表予定である。 また, この研究で蓄積した正定値判定の手法の応用として, 量子情報理論における新たな知見を得た。量子情報理論では, monotone metricから自然に定まる行列環上の変換がいつ完全正写像となるかが重要な研究テーマであるが, その判定が正定値性判定と非常に関係深い。一般論の研究とと共に有名なWigner-Yanase-Dyson関数と関連するmonotone metricの定める行列環上の変換がどのパラメータの範囲で完全正写像となるかを決定した。これは連携研究者日合氏, 及び海外のこの分野の専門家(D.Petz, M.B.Ruskai 氏)との共同研究であり, 共著論文は現在投稿中である。 一方, 研究分担者綿谷氏は従来から行っている複素力学系から生じる作用素環の研究を更に発展させた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究目的で掲げた問題に関して、解明されない事柄も多い点は不満が残る。しかしながら, 基礎科学分野の研究とは元来そのようなものであるし, 計算結果の蓄積に関しては着実に進んでいる。また, この研究における手法の量子情報理論への応用も見つかった点は, 当初想定してなかった研究成果である。 以上,「おおむね順調に進展している」と判断できる。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度と同様Fourier変換の計算に基づく正定値の判定, それに基づく作用素ノルム不等式に関する結果を蓄積するとともに, 無限分解可能性に対する新たな知見を得る為の研究を継続する。 正定値判定の手法の量子情報理論への応用が, 研究者日合氏, 及び海外のこの分野の専門家 (D.Petz, M.B.Ruskai 氏)と共同研究に得られたが(「研究実績の概要」参照), この研究を通じて新たに調べるべき問題が多数出てきた。従って, 共同研究を更に進展させる事により, 作用素平均の量子情報理論への更なる応用が見いだされる事が期待される。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
H24年度に計画していた海外出張が急にキャンセルとなり「次年度使用額」が多少出たが、H25年度は例年通り学会, 関数解析関係の研究集会への参加, 連携研究者の訪問・招聘等を行い, 研究討論を実施する予定である。 特に, 量子情報理論に関する共同研究を行っている M. B. Ruskai 氏 (アメリカ) が日本訪問予定であり, 彼女と連携研究者日合の両氏を福岡に招き研究討論を行う予定である。
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Research Products
(3 results)