2011 Fiscal Year Research-status Report
バナッハ空間及び関数空間の幾何学的構造の研究とψ直和の応用
Project/Area Number |
23540216
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
加藤 幹雄 信州大学, 工学部, 教授 (50090551)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
斎藤 吉助 新潟大学, 自然科学系, 教授 (30018949)
田村 高幸 千葉大学, 人文社会科学研究科(系), 助教 (30302582)
鈴木 智成 九州工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (00303173)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | バナッハ空間のψ直和 / 弱uniform smooth性 / uniform non-squareness / 凸関数 / absolute norm / [ell]_1 type norm / von Neumann-Jordan定数 / バナッハ空間の幾何学 |
Research Abstract |
(1) Weak nearly uniform smoothness(WNUS性)は空間の不動点性を導く性質の一つとして興味深い。任意有限個のバナッハ空間のψ直和のWNUS性を中心に研究し、その特徴づけを得た。また、応用としてuniformly non-square(UNSQ)でないが不動点性を持つ空間が豊富に存在することを示した(投稿準備中)。このことは、2006年の有名な結果「UNSQな空間は不動点性をもつ」に於いてUNSQ性がまだかなり強い十分条件であることを示唆している。なお、任意有限個のバナッハ空間に対する上述の考察は著しく複雑であり、その研究過程でCn上の[ell]_1型ノルムを生成する新たな凸関数の族を導入したが、この凸関数の族について一連の性質を明らかにした。また、ψ-ノルムがstrictly monotoneの場合、任意有限個のバナッハ空間のψ直和に対するUNSQ性の特徴付けを得た(preprint)。 (2) 単位区間上の凸関数からC2上のabsolute normを構成するBonsal-Duncanの結果を一般化して、任意の有限区間上の凸関数からabsolute normを構成する手順を与えた。これを用いて一連の2次曲線からC2上のabsolute normを構成し、それらのvon Neumann-Jordan(NJ)定数を決定した(J. Nonlinear Convex Anal., 掲載決定)。この結果は、C2上の[ell]2 normが双曲線の一部から構成されることに動機を有する。これにより、最近得られたNJ定数とJames定数に関する不等式(高橋-加藤,JMAA, 2009)の精密化について知見を得た。 (3) Smoothnessに関連した幾何学的定数A(X)について一連の成果を得た(投稿準備中)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
任意有限個のバナッハ空間のψ直和については、数年前よりUNSQ性の研究を進めてきたが、WNUS性の研究はその前段階に位置するもので、今年度ようやく満足のいく成果を得た。その研究過程で見出した[ell]_1型ノルムを生成する凸関数の族に関する研究は、当初の予想をはるかに超えて進展し、懸案のUNSQ性の研究に大きな手がかりを与えるものとなった。また、幾何学的定数、とくにNJ定数に関する研究も順調に進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
UNSQ性の特徴付けなど任意有限個のバナッハ空間のψ直和に対して研究を進める。また、[ell]_1型以外の特徴的な型のノルムを生成する凸関数の族を考察する。多方面で応用される凸関数の基礎的研究として、その意義は大きいと思われる。また、興味深い研究対象である空間X_(ψ)(未発表)の研究を進める。23年度はψ直和や凸関数の族に関する研究において、新たな手法や道具を創り上げていくことに多くの精力を注ぐことになった。この点で、幾何学的定数に関する研究がやや第2義的になった感があるが、この課題でも興味深い問題が多く、着実に成果を挙げていきたい。研究打ち合わせにおけるアイデア・情報の交換は、新たな研究対象・問題に挑む際、その方向性を探る上で、また証明の実行などにおいて重要であり、共同研究活動の本質的な部分をなす。今後も引き続き、研究分担者や研究協力者と緊密な研究打ち合わせを行い、研究の着実な進展を図る。なお、23年度から研究機関を移ったこと、また上述の課題に集中的に取り組んだため、研究代表者自身は海外の招待講演を中心として、国内の研究集会等における発表を控える形になったが、今後、国内においても研究成果を広く発表していく。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究分担者等との緊密な研究打ち合わせ、また、国内外での研究成果発表のための旅費に多くを充てる。また、文献をはじめ、部分的な成果などを逐一印刷して確認するため、研究費の一部はプリンター関係の消耗品などに充てる計画である。
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Research Products
(16 results)