2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23540217
|
Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
阿部 誠 広島大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (90159442)
|
Keywords | 複素空間 / シュタイン空間 / シュタイン多様体 / 有理型凸性 |
Research Abstract |
阿部誠(研究代表者)は,複素空間の Stein 性・有理型凸性に関連する研究を行ない,主に,次の成果を得た. 1.野口潤次郎・濱野佐知子(連携研究者)と共同で,被約 Stein 空間の因子の余零に関する問題,すなわち,被約 Stein 空間内の超曲面の法束の自明性の判定に関する問題の研究を継続しつつ,得られた諸結果を改良し,それらの内容に関する論文「On Oka's extra-zero problem and examples」(共著)を学術雑誌「Mathematische Zeitschrift」に投稿し,現在,掲載確定である.具体的には,Stein 空間 X の因子 D が余零をもつためには,D の定める Supp(D) 上の法束 N(D)(D が非特異の場合は Grauert(1962)の定義と一致する)の第 1 Chern 類が消滅することが必要十分であることを証明した.したがって,dim X ≦ 2 の場合,X の任意の因子 D は余零をもつ.一方,dim X ≧ 3 のとき,この条件が必ずしも満たされないことを示すいくつかの例を与えた.特に,D が非特異かつ既約な場合の例を与えることにより,上田の問題を解決した. 2.岡・Grauert の原理をみたす複素空間の Stein 性に関する研究を継続し,その過程で得られた結果も含めて,それらの内容に関する講演「An extension of the theorem of Kajiwara-Nishihara to higher dimensional spaces」を研究集会「平成 24 年度複素解析ワークショップ,広島工業大学, 広島市,2013 年 3 月 16 日~17 日」で行なった.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究目的は,Stein 空間・Stein 多様体において,因子群や因子の余零に関する問題(超曲面の法束の自明性の判定に関する問題)との関係にも注目しつつ,開集合の Stein 性・有理型凸性に関連する解析的または幾何的性質についての研究を行うことにより,Stein 空間の一般的な構造の解明に寄与することであった.平成 24 年度は,野口潤次郎・濱野佐知子(連携研究者)と共同で,Stein 空間の因子の余零に関する問題を継続し,論文を完成することができたので,この問題については,当初の目的を達成することができた.また,円板的性質の高階化と中間的擬凸性に関連する問題の研究にも着手した.このように研究課題に関する一定の進展があったため,交付申請書に記載した「研究の目的」の達成度はおおむね順調に進展しているといえる.
|
Strategy for Future Research Activity |
研究代表者(阿部)は,Stein 空間の一般的な構造の解明を目指して,Stein 空間・Stein 多様体等において,開集合の Stein 性に関連する解析的または幾何的性質の研究を行う.具体的には,主として,準単葉型 1 次元 Stein 空間内の開集合の Runge 性と強い円板的性質の研究の継続,円板的性質の高階化と中間的擬凸性に関連する問題の研究の継続である.連携研究者(島・濱野)は,これらの研究に関して,複素代数幾何的・ポテンシャル論的な方法など,各の専門に由来するアプローチによる研究が可能な場合に,研究代表者に助言を与えるか,研究代表者と協力して研究に従事するか,または関連する課題について,独自に研究に従事する.
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究目的を達成するための補助金の使用の仕方としては,関連する文献の調査・研究,および論文・報告の執筆や,必要になる実験的な数値計算・数式処理等のための PC で使用するソフトウェア・電子媒体や,筆記用具等の各種の文房具類等の消耗品を購入する ための費用として,ある程度,使用する.文献に関しては,多変数関数論・複素解析幾何・複素代数幾何,および,それらに関連する諸分野の書籍類が必要であるが,新規に出版されるものを中心に,それらを揃えるための図書購入費としても使用したい.一方,国内旅費・外国旅費に分類される部分が,比較的には,大きな部分を占める予定である.日程的に都合がつく範囲において,所属機関の異なる研究代表者・連携研究者の研究打ち合わせや,他の研究機関に所属する近接分野の研究者との研究上の交流または討論,あるいは,国内または外国で開催される研究集会等に参加するために利用する.
|