2011 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23540220
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Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
西尾 昌治 大阪市立大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (90228156)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐官 謙一 大阪市立大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (70110856)
竹内 敦司 大阪市立大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (30336755)
下村 勝孝 茨城大学, 理学部, 准教授 (00201559)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2015-03-31
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Keywords | ポテンシャル論 / 熱方程式 / 分数ベキ作用素 / マルチン境界 / ベルグマン空間 / テープリッツ作用素 / ブロッホ空間 / シャッテン族 |
Research Abstract |
当該年度は、本研究課題の初年度であるので、研究計画に沿ってこれまで知られている知見を整理することから始めた。本研究の交付申請調書記載の「研究の目的」、「研究実施計画」においては、大まかに見て3つの柱からなっている。1つ目は、熱方程式のマルチン境界に関するもの、2つ目は、多重熱方程式に関する研究、そして、最後の3つ目は、放物型ベルグマン空間についてである。 第一の熱方程式のマルチン境界に関しては、これまでその基礎となる熱方程式の解を保つ変換を分担者の下村勝孝が中心になり研究を進め、リーマン多様体上の変換を決定するに到り一応の区切りとなった。そこで、当該年度はセミリーマン多様体へと話を進め、ラジアル計量に対する結果を分担者の下村勝孝がまとめ、論文として発表した。また、定常解の場合には新たな変換としてベートマン変換を捕まえることに成功し、これまでよく知られていたケルビン型の変換との関係を調べた。この成果も論文として発表されている。次に第2の多重熱方程式については、論文として発表する成果は得られなかったが、情報収集を進め多重調和関数の場合にナビエ境界条件のグリーン関数に関する恒等式が最近プレプリントとして、発表されていることがわかり、熱方程式との関連が期待されるところである。最後に第3の方物型ベルグマン空間の研究では、テーマをコンジュゲートとテープリッツ作用素に絞って集中的に研究を進めた。コンジュゲートでは、指数が無限大の場合に対応するブロッホ空間および形式的にはリース変換に対応する分数ベキ微分を用いた新たなコンジュゲートの概念を提案し、放物型ハーディ空間へと研究を進める準備が整いつつある。今後の進展に非常に期待が持てるところである。また、テープリッツ作用素に関しては、シャッテン族やランク有限といったコンパクト作用素と関連した結果が得られ、論文として発表される予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
研究目的に挙げた3つのテーマのうち2つ「熱方程式のマルチン境界」、「放物型ベルグマン空間」については一定の成果が得られ、論文として発表あるいは掲載が決定している状況である。さらに、3つのいづれのテーマにおいても当初予想しなかった方向への非常に強い示唆に富んだ情報が得られた。具体的には、「熱方程式のマルチン境界」については、セミリーマン多様体上の熱方程式へと発展し、定常解を保つ変換や、ラジアルでない計量に関する熱方程式を保つ変換を決定する問題が浮上してきた。また、「多重熱方程式に関する研究」では、多重調和関数がモデルとして考えられるが、これまで知られていなかった関係式が最近発見されたという情報がもたらされた。そのような結果をいかに解釈することが可能であるかが問題である。さらに、分数次も非常に興味のあるところである。そして最後に、「放物型ベルグマン空間」については、関連する関数空間、例えばブロッホ空間、あるいは、一般領域上の熱方程式に関するベルグマン空間等の詳細な考察が新たな問題である。コンジュゲートについても今のところ今回新規に提案したものを含めて3種類が提案されていて、しかもいずれも自然に現れたものであり、将来放物型ハーディ空間の考察にはどの概念を用いるのが有効なのかを見定める必要が生じてきた。 以上のように、当初の予算使用計画を変更し前倒し請求をして研究を進めた理由もそこにあるといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
研究をどの方向に進めるかを見定めることは、成果の大きさや波及効果をに直結すると考えられる。そこで、方法としては、セミナーを積極的に企画し、最新の情報を得ることが重要であると考えている。 また、内容的には現時点での方向性として、それぞれのテーマについて次のように考えている。 1。「熱方程式のマルチン境界の幾何学考察」:まず、熱方程式の解を保つ変換の研究の進展はこの方向の成果を得るのに必須と考えている。さらに、そろそろその応用を考える時期に来ているともいえる。その観点からは、次元の問題が避けて通れないところであり、積極的な情報収集につとめる。 2。「多重熱方程式に関する研究」:領域はユークリッド空間の上半空間で考えるとして、整数ベキに関してはナビエ境界条件に対するグリーン関数は基本解を用いた表示は得られている。そこで、分数ベキの放物型方程式の分数ベキを考察していくのが興味深いと思われる。 3。「放物型ベルグマン空間およびその類似の関数空間の研究」:ベルグマン空間には類似の空間が自然にあらわれてくる。例えば、ハーディ空間、ブロッホ空間である。これらの放物型バージョンおよびその上の作用素の研究、特にハンケル作用素やテープリッツ作用素の有界性、コンパクト性およびベルグマン射影との関連が検討課題である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
上の項目で述べたように、セミナーへの参画、企画は重要で、名城大学ポテンシャル論セミナーへの参加、大阪市立大学複素解析セミナーの主催を計画している。また、さらに研究を進めるために、次年度では、海外から研究者を招いて、京都大学数理解析研究所において国際研究集会を催すことを計画している。計画はかなり具体化しており、研究集会の研究代表者の平田賢太郎氏の提案に賛同し、本科研費の研究代表者の西尾昌治は組織委員として計画立案に参加している。招聘予定の海外研究者として、ドイツ・アイヒシュテットからシメオニディス氏、チェコからはエングリス氏を考えている。それぞれ、調和変形と平均値の性質および、ベルグマン核の評価に関して、最新の情報がもたらされるものと期待される。 また、物品費として,情報収集のための図書の購入を計画している。
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Research Products
(8 results)