2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23540220
|
Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
西尾 昌治 大阪市立大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (90228156)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐官 謙一 大阪市立大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (70110856)
竹内 敦司 大阪市立大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (30336755)
下村 勝孝 茨城大学, 理学部, 教授 (00201559)
|
Keywords | ポテンシャル論 / 熱方程式 / 分数冪作用素 / ベルグマン空間 / テープリッツ作用素 / ハーディ空間 |
Research Abstract |
当該年度は、本研究課題の2年目にあたり、初年度に行った調査研究によって浮かびあがって来た課題のうち重要度の高いものそして著しい進展が見込めるものに重点的に力を入れて研究を進めた。また、当初の研究計画に挙げたものの初年度の調査で新たな知見が得られなかったものについては引き続き情報の収集に努めた。 本研究の申請調書記載の「研究の目的」および「研究実施計画」においては、大まかに見て3つの柱によって構成されている。1つは熱方程式のマルチン境界に関するもの、もう1つは多重熱方程式に関する平均値の性質の研究、そして最後の一つは放物型ベルグマン空間についての研究である。 第1の熱方程式のマルチン境界については、分担者の下村勝孝と熱方程式の解を保つ変換を中心に研究を進めて来たが、当該年度では双曲型方程式に関する等角写像について一定の成果が得られた。これは、次年度からの不定値計量に対する熱方程式に関する研究の足がかりになると期待される。次に平均値の性質に関してであるが、当該年度に開催されたポテンシャル論国際集会に招聘したシメオニディス教授から新たな情報がもたらされた。彼の研究は3次元のカドラチャー等式に関連するものであるが,高次元化が次の目標になると思われる。最後に放物型ベルグマン空間についてはコンジュゲート関数の問題から放物型ハーディ空間との深い関連が初年度の調査研究によって強く示唆されていた。当該年度においては、まず基本的な問題として,指数が1より真に大きい場合を整理して論文としてまとめ現在投稿中である。今後の研究の基礎になるものと考えられる。また、初年度の研究実績として得られたテープリッツ作用素に関する研究は、当該年度に論文および国際研究集会で発表された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度新たな方向性として浮上した放物型ハーディ空間について,基礎的な部分を連携研究者らと論文にまとめて学術雑誌に投稿した。次年度以降さらに本格的な成果が期待される。ここでは、コンジュゲートの問題の解釈が重要であり,当該年度にドイツから招聘したシメオニディス教授とその点について有用な意見交換を行うことができた。それによって放物型ハーディ空間の放物型ベルグマン空間との新たな関連が明らかになりつつある。 研究目的に挙げた主なテーマのうち、まず熱方程式のマルチン境界については,初年度論文発表した成果に加えて、当該年度の研究によって新たな方向である不定値計量をもつリーマン多様体上の熱方程式の解を保つ変換の研究への足がかりとなる成果が得られた。また、未だ情報収集の段階のとどまっている多重熱方程式に対する平均値の性質においては国外から関連分野の研究者を招聘するなどさらに積極的に検討を加え停滞状況の打開をはかっているところである。 以上のように、進展状況には多少の差はあるもののおおむね当初の計画通りに進展していると考えている。
|
Strategy for Future Research Activity |
研究をどの方向に重点的にすすめるべきかを見定めることは、成果の大きさや波及効果に直結すると考えている。そのため、普段の情報収集が欠かせないところであるが,その方法として,セミナーを積極的に企画し、また、研究集会などに出席して,関連の研究者との情報交換を行うことが重要である。 また、当初の研究計画のそれぞれのテーマに対して,当該年度の実績と照らし合わせて現時点における今後の方向性として次のように考えている。 1。「熱方程式のマルチン境界の幾何学的考察」:まず、熱方程式の解を保つ変換の研究の進展はこの方面において成果を挙げるために必須であると考えている。当該年度に得られたのははからずも双曲型方程式に関連した結果であるが,逆にそのことが不定値計量に関する熱方程式の研究へとすすむための足がかりを与えることとなった。まずは基礎的な予備研究として,半ユークリッド空間上の熱方程式から研究を開始しようと計画している。 2。「多重熱方程式に関する平均値の性質に関する研究」:少しこれまでとは方向性が異なるものになるが,カドラチャー等式の高次元化への試みを重みのない基本的な場合から始めて行く計画である。 また、分数冪放物型方程式との関連は興味深いテーマで情報収集が必要である。 3。「放物型ベルグマン空間上の作用素解析」:ベルグマン空間上のテープリッツ作用素の研究はかなりまとまったものになって来たが,それに付随して関連する空間,作用素が自然に現れてくる。例えば,ハーディ空間やブロッホ空間そしてハンケル作用素などである。今後はこれらの対象との関連が興味深い問題点になってくるものと考えている。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
上の項目で述べたように、セミナーや研究集会への参画企画は重要で,名城大学ポテンシャル論セミナーへの参加、大阪市立大学複素解析セミナーの運営を計画している。また、さらに詳しい情報を得るために次年度はポテンシャル論のヨーロッパ3大センターの一つであるルーマニアのブカレストを訪問しセミナーでの発表および研究打ち合わせを計画している。 また、物品費として情報収集のためにポテンシャル論関係の図書の購入を計画している。
|
Research Products
(10 results)