2012 Fiscal Year Research-status Report
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23540233
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
小沢 登高 京都大学, 数理解析研究所, 准教授 (60323466)
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Keywords | 作用素環 |
Research Abstract |
Alain Conneは1976年にFields賞受賞論文において、任意のvon Neumann環は適切な意味で行列モデルで近似できるであろうという予想を提示した。このvon Neumann環の分類理論における予想は、1993年にKirchbergが作用素環論における全く見掛けの異なる様々な重要問題と同値であることが示されて以来、作用素環論における最重要の未解決予想のひとつとされている。近年この予想はさらに分野の垣根を越え、非可換実代数幾何学や量子情報理論における未解決問題とも密接な関係があることが示された。平成24年度の本研究計画はこの予想に取り組み、この予想が量子情報理論におけるTsirelsonの問題と同値であることを示した([1])。しかし予想の解決はまだ遠いと思われる。Tisrelson問題は量子論における実在論に関係した問題である。Einstein--Podolsky--RosenはEPRパラドックスにより量子論が古典的実在論と両立しないことを指摘したが、その後、古典的実在論に基づく相関関係が満たすべきBell不等式が現実には成立していないことが実験により示され、古典的実在論が棄却されることとなった。それでは量子論に基づく相関関係にどれだけの可能性があるかを問うのがTsirelson問題である。本研究計画では独立した2つの系の間の量子相関関係が、少しだけ相互作用のある系の間の量子相関関係の極限として現れることを示し、Tsirelson問題に対する新たな洞察を得た([2])。 [1] N. Ozawa; Jpn. J. Math., 8 (2013), 147--183. [2] N. Ozawa; J. Math. Phys., 54 (2013), 032202 (8 pages).
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
Connes埋め込み予想の解決には程遠いものの、量子情報理論との関係を明らかにするなど一定の進展があった。またTsirelson問題に対する漸近的アプローチは量子相関関係を理解する上で重要な意味がある。その他にもBanach空間の研究や、行列の交換子のノルム評価などで幾つかの結果を得ている。
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Strategy for Future Research Activity |
招聘した研究者が事情により来日することが出来なかった。このうち、McGill大学のPichot准教授とVanderbilt大学のJuschenko助教授が平成25年度に来日する予定である。 本研究計画の主要部分については、研究代表者がこれまで通りに数学の研究を続ける予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
例年通り(主に海外の)研究集会に参加し、自らの成果を報告すると共に最新の研究動向について参加者らとの情報交換を行う。具体的には夏にテキサス農工大学、ドイツ・オーベルヴォルファッハ研究所、冬にパリ・ポワンカレ研究所などを訪れることを計画している。
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