2011 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23540237
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Research Institution | Joetsu University of Education |
Principal Investigator |
松本 健吾 上越教育大学, 学校教育研究科(研究院), 教授 (40241864)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2015-03-31
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Keywords | C*-環 / 記号力学系 / 位相的マルコフシフト / 作用素環 |
Research Abstract |
23年度は、本研究計画の初年度であり、記号力学系ならびに作用素環の研究者との研究交流を行い、記号力学系と異分野である作用素環との関連を連携研究者の富山淳との協力の下に明らかにすることを当初の大きな目的としていた。計画書に書いた様に平成23年度に京都大学数理解析研究所において国際研究プロジェクト「作用素環とその応用」が9月、11月、1月と計3回のべ約20日間にわたり開催され、それに参加し、国内外の主に作用素環の研究者と最新の研究情報を交換できた。さらに、11月の上記研究集会においてI.F. Putnam 教授(カナダ ビクトリア大学)の力学系の軌道同型類とその作用素環についての講演に触発され、記号力学系の特に位相的マルコフシフトの軌道同型類とCuntz-Krieger 環の同型類に明確な対応があることが解明できた。その結果は、すぐに、論文「Classification of Cuntz-Krieger algebras by orbit equivalence of topological Markov shifts 」にまとめられ、アメリカ数学会の学会誌(Proceedings of Amer. Math. Soc.) に掲載されることとなった。また、上記論文の内容を、3月に東京理科大学で行われた日本数学会においても発表した。また、2次元の記号力学系である平面タイルばりからC*-環を構成できることもわかり、その構成とC*-環の構造について、9月に信州大学で行われた日本数学会と11月に琉球大学で行われた作用素論・作用素環論研究集会で講演を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上記「研究事績の概要」に記載したように、位相的マルコフシフトという記号力学系の基本的なクラスについて、その軌道同型類が対応するC*環であるCuntz-Krieger 環の同型類に対応することがおおむね解明でき、それを論文「Classification of Cuntz-Krieger algebras by orbit equivalence of topological Markov shifts 」にまとめアメリカ数学会の学会誌(Proceedings of Amer. Math. Soc.)投稿し、受理された。新たな指針として充足群と軌道同型類との関係を解明することへの手がかりもつかみ、記号力学系の軌道同型類と構成されるC*環との関係がさらに明確になることへの手ごたえをつかんだ。また、同時に2次元の記号力学系からC*-環を構成することにも成功し、現在 論文として出版するために準備をできる段階になった。このように、少しずつ、記号力学系とC*-環の関係が明らかになりつつある。
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Strategy for Future Research Activity |
位相的マルコフシフトという記号力学系の基本的なクラスについて、その軌道同型類が対応するC*環であるCuntz-Krieger 環の同型類に対応することがおおむね解明できたが、まだ完全なものとは言えない。さらに記号力学系の充足群と呼ばれる群の代数構造が、記号力学系の軌道構造にどのように関わってくるか、作用素環の視点からも明確にしたい。この問題は記号力学系の分類問題とも本質的に関わってくるので、大きな問題である。また2次元の記号力学系とそのC*環については、その構成も含めて検討する必要があり、初年度に構成したC*-環についてももう一度その構造をきちんと明らかにし、もとの2次元の記号力学系との関係を明らかにしたい。2次元の記号力学系は、平面タイリングとも関係しているので、たいへん興味深い数学的対象であり、1次元の場合ほど、構造が良くわかっているとは言えない状況である。2次元の記号力学系の次は 3次元等の高次元の記号力学系とC*-環の関連の研究も目前に迫っており、この方向で解明せねばならない問題は多い。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当初の研究計画では記号力学系とC*-環の研究の中で、特にゼータ関数とヒルベルト双加群の視点から研究することが予定であったので、上記に書いた記号力学系の充足群との関係や2次元の記号力学系の研究に、加えてこれらの視点からの研究を計画している。そのためには、ヒルベルト双加群の専門家の綿谷教授(九州大学)、梶原教授(岡山大学)や充足群の専門家の松井宏樹氏(千葉大学)、濱地敏弘氏(九州大学)、杉崎氏(熊本大学理学部)らと、積極的に研究交流を行いたい。さらに、可能ならば、記号力学系とC*環の大家であるWolfgang Krieger教授(ドイツ、ハイデルベルグ大学)を招聘し、従来から行っている記号力学系とC*環の共同研究を推進したい。 また、位相力学系とC*環の専門家である富山教授(東京都立大学)からも助言を受け、できれば共同で軌道同型とC*-環の関係について解明できれば と考えている。富山教授(東京都立大学)には、引き続いて連携研究者として、本研究の推進に協力していただく。
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