2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23540237
|
Research Institution | Joetsu University of Education |
Principal Investigator |
松本 健吾 上越教育大学, 学校教育研究科(研究院), 教授 (40241864)
|
Keywords | C*-環 / 記号力学系 / 位相的マルコフシフト / 軌道同型類 / HilbertC*-加群 |
Research Abstract |
24年度は、本研究の2年目に当たり、「記号力学系の軌道同型類の作用素環を用いた研究」、「記号力学系の作用素環を用いた不変量の研究」ならびに、「2次元の記号力学系の作用素環を用いた研究」を中心にして、連携研究者の富山淳教授(東京都立大学理学部名誉教授)の協力のもとに行ってきた。前年度に書いた論文「Classification of Cuntz-Krieger algebras by orbit equivalence of one-sided topological Markov shifts」(アメリカ数学会の雑誌 Proceedings of American Mathematical Society に掲載)に続き、Cuntz-Krieger 環の充足群の代数構造が、完全に片側マルコフシフトの軌道同型類に対応することがわかり、秋の九州大学における数学会で「位相的マルコフシフトの充足群とCuntz-Krieger 環の分類」と題して発表した。また、この研究の詳細を9月の京都大学数理解析研究所のRIMS研究集会において「Classification of orbit equivalence of Cuntz-Krieger algebras by orbit equivalence 」の表題で講演した。 また並行して行っている「2次元の記号力学系の作用素環を用いた研究」では、Hilbert C*-module の2次元版を考え、それからできるC*-環も構成し、論文「C*-algebras associated with Holbert-C*-quad modules of finite type」にまとめ、 3月に行われた京都大学での日本数学会において発表した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上記「研究業績の概要」に記したように、「記号力学系の軌道同型類の作用素環を用いた研究」ならびに、「2次元の記号力学系の作用素環を用いた研究」を中心にした研究において、いくつかの研究成果が論文として発表される見通しとなっている. 特に前者の研究では、位相的マルコフシフトの充足群が非従順群であることがわかり、研究成果としてまとめた論文「K-groups of the full group actions on on-sided topological Markov shifts」が雑誌 Discrete and Continuous Dunamical Systems に出版された。またHiederberg大学(ドイツ)のKrieger 教授と共同で、記号力学系にlambda-synchroniztion という新しい性質を導入し、この性質が記号力学系の位相共役不変量になっていることもつきとめ、その成果は雑誌J. Mathematical Analysis and application に発表予定になっている。また。この lambda-synchroniztion という性質は、flow equivalence で不変であることもつきとめ、その結果が論文、「A certain synchronizing property and flow equivalence 」にまとめられ Israel J. Math. に出版予定である。このように、研究成果は順調に得られている。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後も継続して「記号力学系の軌道同型類の作用素環を用いた研究」、「記号力学系の作用素環を用いた不変量の研究」ならびに、「2次元の記号力学系の作用素環を用いた研究」を中心におこなう予定である。特に 位相的マルコフシフトの充足群が、フルシフト場合は、R. Thompson が1960年代に発見した有限生成無限単純群(いわゆるTompson 群)になっていることがわかるので、今後は群論的な視点からも記号力学系の充足群の研究を行いたいと考えている。Thompson 群は、幾何学的な視点特にホモトピー論的な視点からも研究されている群なので、記号力学系の充足群の研究にこのようなトポロジー的な観点からも研究することを考えている。 また、「記号力学系の作用素環を用いた不変量の研究」においては、共同で研究してきたHiederberg大学(ドイツ)のKrieger 教授とも研究を継続し、lambdaーsynchronizationの研究とくに、lambda-synchronization をもったsubshift からできるC*-環の代数構造やそのK-理論の研究も進めたい。また、記号力学系や、Cuntz-Krieger 環を使うと組合せ論に現れるCatalan 数の一般化もできることがわかるので、その研究もできれば推進したい。「2次元の記号力学系の作用素環を用いた研究」も平面のタイル張りと関係してたいへん興味深いので、この研究もぜひ推進したく考えている。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
位相力学系の軌道同型類の研究は、特にCantor 集合上では松井宏樹氏(千葉大学)、杉崎文亮氏(熊本大学)や濱地敏弘氏(九州大学)がすでに先駆的な研究をしている。また一般の位相力学系では富山淳氏(東京都立大学)が作用素環の視点からも研究しているので、彼らの助言を受けながら、記号力学系の軌道同型類の研究を推進する。また、上記「今後の研究の推進方策」でも書いた様に、幾何学的、ホモトピー論的な視点からも記号力学系の充足群を研究する予定なので、幾何学的群論やホモトピー論の研究者と積極的に交流し、研究を推進したいと考えている。また、「2次元の記号力学系の作用素環を用いた研究」では、Hilbert C*-module の2次元版を研究することになるので、Hilbert C*-bimodule の専門家である綿谷安男氏(九州大学)と梶原毅氏(岡山大学)とセミナーや研究会で意見を交換し助言を受けながら、研究を進めたいと考えている。また、記号力学系や、Cuntz-Krieger 環を使うと組合せ論に現れるCatalan 数の一般化の研究では、数列の母関数の精密な計算が必要になるので、計算機の使用も視野に入れている。
|