2013 Fiscal Year Research-status Report
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23540237
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Research Institution | Joetsu University of Education |
Principal Investigator |
松本 健吾 上越教育大学, 学校教育研究科(研究院), 教授 (40241864)
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Keywords | 記号力学系 / C*環 / サブシフト / 軌道同型 / Cuntz-Krieger 環 / 位相的マルコフシフト |
Research Abstract |
25年度は、本研究の3年目に当たり、「記号力学系の軌道同型類とC*環の分類の研究」、「記号力学系の作用素環の構造論やK-理論を使った不変量の研究」を中心にして、連携研究者の富山淳教授(東京都立大学理学部名誉教授)の協力のもとに行われた。 特に、これまで3年間の集大成として、11月18日から11月23日までコペンハーゲン大学で行われた国際会議「Flow equivalence, symbolic dynamics and graph algebras」において招待講演「Orbit equivalence, full groups and Cuntz-Krieger algebras」の講演を行い、位相的マルコフシフトの軌道同型についての 最近の松井宏樹氏(千葉大学理学研究科教授)との共同研究を発表した。内容は、論文「Kengo Matsumoto: Classification of Cuntz-Krieger algebras by orbit equivalence of topological Markov shifts 」(Proc. Amer. Math. Soc. 141(2013), No7, 2329-2342において予想として提出された問題「マルコフシフトの片側連続軌道同型はflow equivalenceを導く」を肯定的に解く完全回答を与えたもので、preprint 「K. Matsumoto and H. Matui, Continuous orbit equivalence of markov shifts and Cuntz-Krieger algebras」にまとめられた。 この論文は、Kyoto J. Math. に掲載予定となった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究業績の概要にも記したように、松井宏樹氏との共同研究により、「マルコフシフトの片側連続軌道同型はflow equivalenceを導く」という予想を、肯定的に解くことができ、preprint 「K. Matsumoto and H. Matui,Continuous orbit equivalence of markov shifts and Cuntz-Krieger algebras」にまとめることができた。これ結果により、片側マルコフシフトの連続軌道同型による分類問題がある意味で完全に決着がつき、 片側マルコフシフトの連続軌道同型類、Cuntz-Krieger 環プラス行列式det(1-A) の符号、片側マルコフシフトからできる亜群の同型類、片側マルコフシフトの充足群の同型類 の4つがきちんと対応することがわかった。また、松井宏樹氏との共同研究で、実数のbeta-進展開からできる亜群の充足群を考えることにより、無限単純離散群として有名な Higman-Thompson 群の一般化を発見し、preprint 「Topological full groups of C*-algebras arising from beta-expansions」にまとめられた。このように、主として記号力学系の軌道同型類についての研究成果が得られ、研究は順調に進展していると言えると思う。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度も継続して、「記号力学系の軌道同型類のC*-環を用いた研究」、「記号力学系の作用素環を用いた不変量の研究」中心におこなう予定である。 マルコフシフトの片側連続軌道同型の研究が一段落したとはいえ、そのfull group の性質や、markov でない場合の記号力学系の軌道同型の研究など、周辺には問題が山積みである。ひとつひとつできるところから解決できればと考えている。 また、昨年のコペンハーゲン大学での国際会議で、Markov-Dyck shifts という計算機言語に現れるDyck言語のMarkov版の記号力学系が、注目を集めていることがわかり、Markov-Dyck shifts の完全分類をC*-環を用いて、研究することも計画している。 このMarkov-Dyck shiftsは、Cuntz-Krieger 環の生成元の部分等距離作用素を使っても構成できることが、わかっているので、Markov-Dyck shifts の分類は、Cuntz-Krieger 環の分類とも密接に関係している。その意味で作用素環の分類という観点からもたいへん興味深く、今後の大きな研究課題であり、研究を推進できればと考えている。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本年度は、申請額700,000 であり、実質使用額680,879 と研究計画当初の予定とほぼ同じ額の支出となった。次年度使用額119,025 となったのは、前年度未使用額が99,904あり、その2年越しの繰越のためである。次年度は、本研究計画4年目の最終年度であるため、この繰越金をあわせて、計画的に、研究を推進する予定である。 26年度は、本研究計画の最終年度であり、研究の論文としてのまとめ、学会(9月の広島大学、3月の明治大学)や研究会での成果の発表を積極的に行いたい。 その成果発表と共に、順調に進んできた記号力学系の軌道同型の研究を共同研究者の松井宏樹氏(千葉大理学研究科)と議論を重ね、研究連携者の富山淳氏の力を借りながら、さらに推進したい。また、Markov-Dyck shifts の研究を金沢大学工学部の藤崎氏とできれば共同で研究することを計画している。 藤崎氏は、Markov-Dyck の不変測度を研究しており、金沢と上越が近いこともあり、セミナーを数回計画したい。また、以前から共同研究を行っているWolfgang Krieger 教授(ドイツ ハイデルベルグ大学)とも、記号力学系の位相不変な性質についての研究や、Markov-Dyck の共同研究も続行する予定である。
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