2011 Fiscal Year Research-status Report
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23540241
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Research Institution | Wakayama University |
Principal Investigator |
片山 聡一郎 和歌山大学, 教育学部, 教授 (70283942)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 波動方程式 / 非線形 / 零条件 / 大域解 / 漸近挙動 |
Research Abstract |
非線形波動方程式の大域解の漸近挙動の研究と関連して, 与えられた関数がエネルギーの意味で漸近自由である, すなわち斉次波動方程式の解にエネルギー・ノルムの意味で漸近するための必要十分条件を, その関数の漸近形と関連させて導出した(投稿準備中). この結果は, 昨年度に3次元空間で研究代表者が得ていた部分的な結果をより精密化して一般次元に拡張したものである. これにより従来の方法では漸近自由であるかどうかが判定できなかった場合も扱えるようになった.また, 空間2次元で単独の半線形波動方程式の初期値問題を考察した. 実数値の場合に知られていた小さな初期値に対する大域解の存在条件を複素数値の場合に拡張した. 漸近解と真の解との誤差評価をより詳しく調べることにより, 非線形項が非線形減衰の効果を持つ場合に, 解の各点的な減衰が速くなるだけではなく, エネルギーも実際に減衰することを明らかにした. またエネルギーは有界になるが, 解が漸近自由にはならないような非線形項があることも明らかにした. これは実数値の場合には見られなかった現象である(大阪大学の砂川氏と室谷氏との共同研究; 投稿中).さらに空間3次元で半線形波動方程式の連立系の初期値問題を考察した. これまでに知られている大域解の存在のための十分条件は満たさないが, ある種の保存量を持つような連立系の初期値問題を考え, 小さな初期値に対して大域解が存在することを示した. また大域解の漸近挙動も解析し, 解の一方の成分のエネルギーが 0 に収束し, もう一方の成分は漸近自由になるという新しい現象を発見した(大阪大学の砂川氏と的場氏との共同研究; 投稿準備中).
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
様々な双曲型方程式系を考察し, 大域解の存在条件やその漸近挙動を明らかにすることが本研究の目的であった. 波動方程式に関する各点的な漸近形とエネルギーの意味で漸近自由であるかどうかを関連付ける基礎定理が得られたこと, いくつかの方程式系を考察し, 従来得られていなかった形での大域解の存在条件を得たこと, これまではあまり知られていなかった形の漸近挙動を発見したことなどから判断して, 研究は概ね順調に進展していると判断した.
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Strategy for Future Research Activity |
今年度までの研究で一定以上の成果が得られたため, 来年度以降も今年度と同様に推進していく予定である. より具体的には新たな非線形双曲型方程式(系)を考察し, 大域解の存在条件や漸近挙動を明らかにしていく. また, これまでに得られたいくつかの結果を統合する方向での拡張も目指す. 随時, 書籍等を購入し新たな知識を得ることで研究の助けとする. 研究集会等へ参加して, 情報収集・成果発表・意見交換等を行い, 研究を推進していく.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
購入を予定していた偏微分方程式関連書籍の出版時期の関係で, 今年度は2万円強の残額がでたが, これは次年度に当該書籍が出版され次第使用する予定である. 次年度も今年と同様に書籍購入, 研究集会への参加等に研究費の大半は使用する予定である.
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Research Products
(1 results)