2011 Fiscal Year Research-status Report
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23540242
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
梶原 毅 岡山大学, 環境学研究科, 教授 (50169447)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2016-03-31
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Keywords | C* 環 / 複素力学系 / 自己相似写像 / ヒルベルト双加群 / トレース / イデアル / 次元群 / K-群 |
Research Abstract |
複素力学系、自己相似写像から作られるC*環のゲージ作用不変環のトレースの分類について研究を行い、自己相似写像の場合については、研究論文にまとめることができた。また、日本数学会2011年秋季総合分科会において、トレースの分類についての成果を公表した。このような C*-環のトレースの完全分類は今まで知らておらず、重要である。複素力学系、自己相似写像から作られるC*環のコアの行列表示を可能として、テント写像、シルピンスキギャスケットなどの具体例に対して、有限コアの行列表示の具体的な計算を行った。行列環の生成元を具体的に書き、n 次のコアから n+1 次のコアへの埋め込みも具体的に記述することができた。これらの成果は、日本数学会2012 年度年会において発表した。なお、この研究はコアの K-群の計算を実行することにつながり、重要である。さらに、自己相似写像から作られるC*環のコアのイデアルの分類の研究に着手している。イデアルの分類はトレースの分類において有効であったトレースの拡張定理にあたるものが存在しないので、その代わりに上で述べたコアの行列表示を用いることを考えている。なお、イデアルを考えることによって、極小離散トレースによる GNS 表現によって生成されるフォンノイマン環のタイプを決めることができる。有限グラフの KMS state は以前 Exel-Laca によって研究されていたが、sink がある場合について調べ、sink に対して I-型 KMS state が存在することを示した。さらに、relative Cuntz-Pimsner 環の KMS state の構造定理の証明も与えた。この結果は論文として刊行予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
研究目的の中で、有理関数力学系、自己相似写像のコアの解析に着手している。まずコアのトレースについては、あまり厳しくない条件のもとで完全な分類に成功しており、以前に分類した KMS state との関係も明らかにしている。分岐点が存在する場合についての Trace の Rieffel 対応についても整理しており、完全に自己完結型の理論を構築することができた。さらに論文にまとめて投稿中である。分岐点のある状況においてC*-環のコアは非常に複雑になり、従来は解析困難と思われていたが、行列表示の方法を開発し、解析可能とした。具体例に対して行列の生成元を書くことができ、これはコアの K-群の計算において重要な意味を持つ。また、コアのイデアルの分類についても研究に着手している。イデアルの分類はトレースと同様なのだが、トレースの場合に有効な手法が使えないので、その代わりにコアの行列表示を用いている。また、有限グラフから作られる C*-環の KMS state の分類を行い、sink と離散型の KMS state が対応していることを示した。以上のように、当初の計画の一部はすでに完成して投稿中であり、その他の部分についても研究に着手して重要な成果を得ており、学会等でも発表している。したがって、本研究は当初の計画以上に進展していると評価する。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、以下の方針に従って研究を進める。自己相似写像から作られるC*環のコアのイデアルの分類の研究を続ける。行列表示を用いてイデアルを分類し、極小トレースと原始イデアルが一対一に対応することを示す。自己相似写像から作られる C*環のコアの行列表現の研究をさらに進める。各レベルの K-群を計算し、埋め込みを具体的に調べることにより、コア全体の K-群を帰納極限の形で記述する。さらに、具体的な状況において、コアの K-群をわかりやすい形で記述する。理論を構築する際のポイントは、分岐点の逆像の上に再度分岐点が出現しないことであり、証明において重要な意味を占めている。有理関数複素力学系に理論を広げる際には、この点が問題になるので、分岐点のチェインが存在する場合に適用できるように理論を拡張する。また、複素力学系の場合逆像にあたるブランチは一般に存在しないので、コアを大域的に行列表現することは一般に不可能であるが、イデアル、トレースなどを考える際には局所的な考察で十分なことが多いので、コアの局所的行列表現の理論を整備し、それによって有理関数複素力学系から作られる C*環のコアのトレースとイデアルの分類を行うことをめざす。さらに、複素力学系のコアの K-群の計算、また K-群によって定義される複素力学系の次元群の計算を行う。以前から研究している複素力学系の軌道同型の研究をさらに進め、軌道同型の C*-環による特徴づけをめざす。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成23年度の年度末において研究計画を予定どおり遂行でき、残額がごくわずかであったので、あえて無理に執行せず次年度に合わせて執行することとした。額がわずかなので、平成24年度の執行に大きな影響は与えない。複素力学系、自己相似写像など力学系理論の図書を購入する。また、C*-環、フォンノイマン環などの作用素環の図書を購入する。また、非線形力学系の計算機実験に必要な計算機系図書の購入も行う。また、論文作成のために必要な図書の購入も行う。計算機実験、論文作成、データ整理に必要なソフトウエア、大量のデータを保存するためのメディアの購入も行う。また、理論計算および研究の整理に必要なノート、ファイルなどの文具の購入も行う。連携研究者と共同研究を行い論文作成を行うため、また国内国外の作用素環、力学系研究者から研究情報を得るために研究調査旅費を使用する。得られた成果を公表するため、国内国外の学会、研究会、セミナーなどに出席するための、成果公表旅費を使用する。さらに、得られた成果を学術雑誌に公表するための論文掲載費を使用する。
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Research Products
(2 results)