2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23540242
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
梶原 毅 岡山大学, 大学院環境生命科学研究科, 教授 (50169447)
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Keywords | 複素力学系 / 自己相似写像 / C*-環 / トレース / イデアル / K-群 |
Research Abstract |
Cuntz-Pimsner への KMS state の構成定理を relative Cuntz-Pimsner 環に一般化し, その結果を用いて有限グラフの sink がその有限グラフから作られる C*-環の finite type KMS state を与えることを示しており, この結果を論文 "KMS states of finite-graph algebras" にまとめて出版した。有理関数によって作られる複素力学系の KMS state の情報から, 分岐点の逆軌道についての情報が得られる実例を示した。この結果は論文にまとめ, すでに受理されており出版予定である。 いくつかの仮定を満たす自己相似写像から作られる C*-環のコアのトレースの構成と分類について研究し, 極小なトレースの完全分類を行なった。この結果も論文にまとめて, 既に受理されており出版される予定である。同様の C*-環のイデアルの分類も行ない, 係数環との共通部分によって決まる閉集合によってイデアルが完全に分類できることをしめした。この結果は, 日本数学会秋季総合分科会で発表した。この二つの結果は, 非可逆力学系から作られるC*-環のコアの性質に関する完全分類であり, この種の結果は現在まで公表されていない。 また, 有理関数力学系から作られる C*-環のコアのトレースについても研究を進めており, 離散的なトレースの構成と分類まで行なった。有理関数の分岐点の構造は複雑であるが, この状況を調べることによってより見通しの良い証明を与えることができた。この結果については、日本数学会年会で発表した。さらに, 自己相似写像の中のいくつかの重要な例から作られるC*-環の有限コアの行列表現の具体的な計算を継続しており, コアのK-群の計算を行なっている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
自己相似写像から作られるC *-環のコアについては, トレースとイデアルの完全な分類が得られ, これに類する結果はこれまでに全く得られていない。また, 次元が一様ではない C*-バンドルの複雑な帰納極限で表される C*-環に対して, 有限部分全体を行列表現する手法を新たに開発し, イデアルの分類に利用した。また, 行列表現によってこのような環の構造に対しての知見も得られた。有理関数力学系の場合は分岐点の逆像上に分岐点が存在し得るので状況が複雑であるが, 離散的なトレースの完全な分類を行なった。 分岐点の存在する状況において, 力学系から生成される C*-環のコアの構造は複雑で今まで手がついていなかったが, 独自に開発した手法も用いて, 解析を大きく進めることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度に引き続いて, 有理関数力学系から作られる C*-環のコアのトレースの分類をさらに進め, イデアルについても調べる。そのため, 有理関数力学系に付随したC*-環のコアの局所的な行列表現の手法を整備する。また昨年度に引き続いて, 自己相似写像から作られる C*-環のコアのK-群の計算を行い, テント写像, シルピンスキギャスケットなどの具体的な例については次元群についても調べる予定である。さらに, コアの情報からジュリア集合上の力学系の構造を復元することも視野に入れて研究を進める。自己相似写像で分岐点の集合がさまざまな次元をもつ場合についても, コアの解析を進める。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
昨年度において研究が予定より順調に進み, 最後に 23,346 円の残額が生じたが, 無理に使用することはせず, 平成25年度の直接経費とあわせて使用することとした。以下は残額と平成 25 年度の直接経費を合算した使用計画である。 共同研究者と研究打合せを行うための旅費, 国内の数学者から研究情報を得るための旅費, 研究成果を国内外で発表するための旅費を使用する。力学系理論、作用素環論、確率論、微分方程式論等の数学図書の購入を行う。 また、数値実験のための計算機、データ保存用メディア、さらには研究を遂行するための文具類を購入する。
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Research Products
(4 results)