2013 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23540242
|
Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
梶原 毅 岡山大学, その他の研究科, 教授 (50169447)
|
Keywords | KMS state / 有理関数 / 自己相似写像 / トレース / イデアル / コア |
Research Abstract |
平成25年度は、以下のように研究を行った。 有理関数力学系から作られるC*-環の KMS state の情報から, もとの力学系の分岐点の逆軌道についての情報が得られる実例を示した。KMS state の分類はすでに行っていたが、分岐点相互の情報を復元することはできていなかった。この結果を論文C*-algebras associated with complex dynamical systems and backward orbit structure にまとめ, 出版した。 自己相似写像から作られる C*-環のコアのトレースの構成と分類について研究し, 極小なトレースの完全分類を行なった。この結果も論 文にまとめて, 既に受理されており出版される予定である。自己相似写像から作られる C*-環のコアのイデアルの分類も行ない, 係数環との共通部分によって決まる閉集合によってイデアルが完全に分類できることも示しており、論文にまとめて投稿中である。この二つの結果は, 非可逆力学系から作られるC*-環のコアの性質に関する完全分類であり, この種の結果は現在まで公表されていない。 また, 前年より引き続いて有理関数力学系から作られる C*-環のコアのトレースについても研究を進めており、離散的な極小トレースの分類を行った。有理関数の場合には自己相似写像の場合と違って、分岐点の逆像上に分岐点が存在するなど、構造は複雑であるが, 見通しの良い証明を与えることができた。この結果については、日本数学会秋季総合分科会で発表した。さらに, 自己相似写像から作られるC*-環の有限コアの行列表現の具体的な形を明らかにした。この結果は日本数学会年会で発表した。さらにコアの行列表現の、コアのK-群の計算への応用を計画している。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
自己相似写像から作られるC *-環のコアについては, トレースとイデアルの完全な分類が得られている。このような結果は他では知られておらず、研究当初に計画した以上に研究が進展している。また分岐点が存在している状況でコアの行列表現の解析法を開発し、それをイデアルの分類に対して有効に用いた。また、K-群の計算にも活かしている。次元が各点で異なるようなC*-バンドルの例であり、詳細な構造は他ではあまり知られていない。 また,有理関数力学系の場合は分岐点の逆像上に分岐点が存在し得るので状況が複雑であるが, 自己相似写像の場合の解析を拡張することによって、離散的な極小トレースの完全な分類を行なうことができている。離散的なトレースの情報は、分岐点の逆像についての情報も含んでおり、以前の研究を大きく進める可能性がある。 分岐点が存在する力学系において, 力学系から生成される C*-環のコアの構造は複雑で今まで手がついていなかったが, コアの行列表現の記述などの方法論を確立することができ、トレース、イデアル、K-群の計算などについて、かなり見通しがよくなってきており、全体として計画以上に進展している。
|
Strategy for Future Research Activity |
昨年度に引き続いて, 有理関数力学系から作られる C*-環のコアのトレースの分類をさらに進め, ファトウ集合に対応したトレースの分類も行う。コアの局所行列表現を記述することにより、トレースから作られる表現の次元を求めるととともに、イデアルについても調べる。また昨年度に引き続いて, 自己相似写像から作られる C*-環のコアのK-群の計算を行い, テント写像, シルピンスキギャスケットなどの具体的な例については次元群についても調べる予定である。さらに, 複素力学系から作られるC*-環のコアの情報からジュリア集合上の力学系の構造を復元することも視野に入れて研究を進める。 以前からの研究に加えて、記号力学系との類似で、複素力学系の軌道同型をC*-環を用いて研究する。複素力学系から生成されるC*-環の極大可換環を調べることにより、複素力学系の軌道同型はほとんど同型に近いことが示されると期待している。 自己相似写像について、今までは分岐集合が点の場合のみ研究したが、分岐集合が高次元になる場合についても研究を進め、最初に分岐の状況がC*-環にどのように反映しているかを調べる。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
昨年度においては研究が予定より順調に進み, 最後に 23,585 円の残額が生じたが, 無理に執行することはせず, 平成26年度の直接経費とあわせて使用することとしたものである。 以下は残額と平成 26 年度の直接経費を合算した使用計画である。 連携研究者と研究打ち合わせを繰り返し行って、研究を推進し、さらには研究成果をまとめて発表するための旅費、国内の作用素環研究者・力学系研究者から研究情報を得るための旅費、研究成果を国内外で発表するための旅費を使用する。また、国内の数学者から研究情報を得るため、実函数論・函数解析学合同シンポジウムを開催してそのための旅費を使用し、また報告集を印刷する。基本的な研究情報を得るため、力学系理論、作用素環論、確率論、微分方程式論などの数学図書の購入を行う。また、複素力学系などの性質を調べるための数値実験のための計算機、データ保存メディアなどの消耗品を購入する。
|
Research Products
(4 results)