2011 Fiscal Year Research-status Report
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23540245
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Research Institution | Tsuda College |
Principal Investigator |
中屋敷 厚 津田塾大学, 学芸学部, 教授 (10237456)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2015-03-31
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Keywords | 国際研究者交流、ロシア / 交際情報交流、イギリス / テータ関数 / 可積分系 / 加法定理 / 代数曲線 / 差分方程式 / 相関関数 |
Research Abstract |
本年度は1.3状態カイラルポッツ模型の一般化2点関数の満たす差分方程式 2.(n,s)曲線のシグマ関数の加法定理 3.可換偏差分作用素の具体的構成 について研究を行った。 まず1について具体的に述べる. 一般化2点関数の満たす差分方程式の係数は、スペクトル曲線と呼ばれる種数12の代数曲線の直積上の有理型関数であるが、その一方の変数を任意に固定し、1変数の関数と思った時の極と零点の位置をすべて具体的に決定した。これは申請書における3状態カイラルポッツ模型の研究計画の(3)に対応する研究であるが、はっきりした結果が出たのはこれだけである。 次に2について述べる。シューア関数の微分に関する性質を調べ、それをKP-ヒエラルヒーのタウ関数に持ち上げ、それを用いてシグマ関数の性質を調べるという方法で(n,s)曲線のプライム形式をシグマ関数の微分を用いて記述した。その結果として多変数シグマ関数に対するFay型の閉じた加法公式を構成した。結果は、リヨン大学および山梨大学における研究集会で発表した。現在論文を執筆中である。なお、種数の低いいくつかの曲線について同様な結果がGibbons-Matsutani-Onishiにより得られていること山梨での研究会の折に知らされた。 最後に3について述べる。テータ因子が非特異であるような主偏極アーベル多様体のベイカー・アヒエゼル加群から、可換偏微分作用素だけでなく、可換偏差分作用素も得られることを示し、2次元の場合にいくつかの作用素の具体形を計算した。これはMironov教授との共同研究である。ただ、理論の定式化にまだ不徹底な部分があり、論文はまだ完成していない。 申請書の加法定理に関する計画の中で、2は(1)に、3は(2)に関係する研究であるが、本来の(1),(2)についてはまだ結果は出ていない。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
1.3状態カイラルポッツ模型の一般化2点相関関数の満たす差分方程式の研究について スペクトル曲線である種数12の代数曲線の標準ホモロジー基底の決定は予想していた以上に難しいことが判明した。具体的に述べれば次のようである。今年度得ることが出来たのは、種数12の曲線のある位数3の自己同型による商として得られる位数4の代数曲線の標準ホモロジー基底である。それから、Fayの性質を満たすように種数12の曲線の標準ホモロジー基底を構成するには、何か一般的代数的手法を開発しないと難しいと思われる。標準ホモロジー基底を具体的に構成できなければ、研究計画の(3)以外は進まないので、研究目的である解の構成という観点からみると、研究は遅れていると判定せざる負えない。2. 代数曲線のテータ関数の満たす多変数関数としての加法公式の研究について 今年度の研究では目的としていることとは少し違う方向の研究結果が得られた。今回得られた多変数シグマ関数の加法定理はいわゆるFay型の公式で、代数曲線上の点のアーベル・ヤコビ写像による像を用いて公式が記述されているという意味で1次元的な公式である。本来の目的は、アーベル・ヤコビ像を完全に追い出した多変数的な公式を求めることなので、その方向の結果とは言えない。ただ、可積分系のタウ関数の性質を用いて従来知られていなかったテータ関数の性質を調べることが出来たという点で、研究目的達成のための重要な基礎となると考えている。従ってこのテーマについての研究はおおむね順調であると考えている。 1,2総合すると、1の達成度が低いことが影響して、研究全体としてはやや遅れていると判断される。
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Strategy for Future Research Activity |
1.カイラルポッツ模型の一般化2点相関関数の満たす差分方程式の研究について今年度の研究で分かったことの中に、3状態の場合でも種数12の曲線の標準ホモロジー基底を決定することは、対称性を系統的に用いるなど何か一般的手法を開発使用するのでなければ、難しいということ、および、種数12の商である種数2の曲線上でも、差分方程式の係数をある方向に分解出来る可能性があること、がある。そこで、種数2の代数曲線を用いて解の構成が可能かどうか再検討する。それがうまく行かないと考えられる場合は相関関数を一度離れて、ある種の周期行列を持つテータ関数を係数とする一般の差分方程式を考察し、その解の構成について、多変数テータ関数の1方向への分解、という考えに基づいて研究する。2. テータ関数の加法定理の研究について今年度の研究で、可積分系のタウ関数の観点からテータ関数の加法定理を研究することはかなり有効であることが分かったので、その方向での研究をさらに推進する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当該研究費が生じた理由は次のようなことです。東日本大震災の影響で、当初、交付額の減額がありうるということで、支出を出来るだけ抑えていた結果、招聘などについて使用時期を逸したということが一つある。その他、購入予定の数式処理ソフトについて、大学でライセンス契約しているものを使用できることが判明し購入不要になったこと、研究の進展の遅れのため発表用に想定していたパーソナルコンピュータを購入しなかったこと、リヨンでの研究会での滞在費が主催者側から支払われたことなどがある。 次年度の使用計画は次の通りである。研究発表用のパーソナルコンピュータまたは同等の役割をする他の電子機器の購入、国内外の関連する研究者の招聘(A.MironovV.Enolski、C.Klein、C.Kalla、松本圭司、山田泰彦、渡辺文彦などの研究者の招聘を研究の進展に応じて考える)、国内外の研究会、セミナーへの出席の為の旅費・滞在費、図書購入、等への支出を考えている。
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Research Products
(2 results)