2012 Fiscal Year Research-status Report
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23540245
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Research Institution | Tsuda College |
Principal Investigator |
中屋敷 厚 津田塾大学, 学芸学部, 教授 (10237456)
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Keywords | 国際研究者交流(ロシア) / (n,s)曲線 / 多変数シグマ関数 / シューア関数 / KP階層 / タウ関数 / 可換偏差分作用素 / テレスコピック曲線 |
Research Abstract |
今年度は次のような研究を行った。1. 多変数シグマ関数のシューア関数、タウ関数の観点からの研究。 2. 可換偏差分作用素環の研究。以下それぞれについてもう少し具体的に説明する。 1は代数曲線のテータ関数の満たす差分方程式の研究で、主に研究目的の2に関連する研究である。可積分系であるKP階層の解の構造は佐藤理論によりよく分かっている。他方KP階層の解にはテータ関数であらわされるものがあることが知られている。この関係を通してテータ関数を可積分系の構造を用いて研究することは有効であると期待されている。本研究は、その方向で一歩を進めるものである。KP階層のタウ関数はシューア関数による、ある特別な形の展開を持つ。そこで、まずシューア関数の微分に関する構造を詳しく研究し、それを用いてタウ関数の微分に関する性質を証明し、最後にそれを応用して多変数シグマ関数の微分に関する性質を確立した。その結果としてプライムフォームの、シグマ関数の微分による表示および、Fayの公式の代数版ともいうべきシグマ関数の加法定理を証明した。この研究ではまず、(n,s)曲線とよばれる代数曲線のシグマ関数について以上のような研究を行い(頼との共同研究)、その後、より一般の代数曲線であるテレスコピック曲線のシグマ関数について同様の研究を行った(綾野との共同研究)。 2も主に研究目的の2に関係する研究である。この研究では代数曲線のヤコビ多様体とは限らないアーベル多様体や、ある種の有理多様体上のBaker-Akhiezer加群と呼ばれるD-加群(微分方程式)を離散化し、それを用いて多変数の可換差分作用素の例を構成した(A.Mironovとの共同研究)。2次元のヤコビ多様体を考え、シグマ関数による表示を考えると、ヤコビ多様体の有理極限を調べることもでき、結果的に2種類の有理関数係数の可換偏差分作用素を構成したことになっっている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究目的の1に関係する研究は、スペクトル曲線の位相的部分の研究が予想外に難しく、昨年度からほとんど進展していない。以後研究の軸を大幅に研究目的2の方に移して研究する。 研究目的2の方向の研究は、今年度比較的順調に進展したと考えている。特に可積分系のタウ関数を用いたテータ関数の研究は、当初考えていたより強力で、かなり一般の代数曲線((n,s)曲線およびテレスコピック曲線)の場合にも、微分の消滅、非消滅や、Fay型の代数的加法定理を証明することが出来た。Buchstaber-Enolski-Leykinの加法定理の別証明や一般化には未だ成功していないが、タウ関数の観点からのアプローチはかなり有効であると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
「現在までの達成度」欄でも触れたように、研究の軸を研究目的2の方向に大きく移して研究する。 研究目的2については、可積分系のタウ関数の性質をさらに積極的に用いて、テータ関数の様々な性質を研究してゆく。例えばリーマンテータ関数に対するリーマンの特異点定理やそのケンプによる拡張などをタウ関数の観点から調べることは有効であると考えている。また、一般の三浦曲線を用いたシグマ関数の研究も、タウ関数を応用する格好の題材である。このようにタウ関数を様々な研究に応用することを通して、タウ関数の新たな性質を開拓し、それを多変数的な加法定理の研究につなげて行きたい。 また昨年度、今年度研究したBaker-Akhiezer加群の研究は加法定理の研究に密接に関係するが、A. Veselov, M. Feiginらによるマクドナルド多項式やその拡張に関係する研究、A. Zheglovらによる可換偏微分作用素環の分類に関する研究にも大きく関係している。Baker-Akhiezer関数は素粒子の弦理論に関係しても議論されており、この機会に少し視野を広げて、Baker-Akhiezer関数に関する種々の研究を統一的に理解することを目指した研究を積極的に進める。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
今年度は、研究目的1に関係する研究が進展せず、その結果として学会出席、発表の機会が少なくなり、研究費の使用額が当初の予定より少なくなった。ただ、研究目的2の方向での研究は順調に進展したので、次年度は、6月にモスクワでの国際会議、7月に京都での国際会議、8月にノボシビルスクでの国際会議に出席発表予定である。研究費の繰り越し分および次年度の研究費の一部は、そのための旅費、滞在費に充てる予定である。また、「今後の研究の推進方策」にも記したように、今年度はBaker-Akhiezer関数について集中的に勉強、研究する予定である。そのためのミニワークショップを12月または2月頃に企画予定である。海外からもMironov(ロシア), Zheglov(ロシア), Feigin(イギリス)など数人の研究者を招聘する。その旅費、滞在費に次年度の研究費の一部を使用する。さらに研究遂行のため、パソコン、ソフトウェアの購入を予定している。
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Research Products
(1 results)