2013 Fiscal Year Research-status Report
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23540245
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Research Institution | Tsuda College |
Principal Investigator |
中屋敷 厚 津田塾大学, 学芸学部, 教授 (10237456)
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Keywords | リーマンの特異点定理 / 国際研究者交流(ロシア) / KP階層の佐藤理論 / タウ関数 / リーマン面 / テータ関数 / シューア関数 / 可換微分・差分作用素 |
Research Abstract |
昨年度は、普遍性を持つ可積分系であるKP階層の観点から、(n,s)曲線およびそれを含むさらに広いクラスの代数曲線であるテレスコピック曲線のテータ関数を研究した。今年度はそれをさらに一歩進めて、任意の非特異代数曲線のテータ関数の性質をKP階層の佐藤理論の観点から研究した。具体的にはリーマンの特異点定理とよばれる古典的な定理の精密化を定式化し証明した。リーマンの特異点定理というのは、テータ因子上の勝手な点におけるテータ関数の零点の重複度を、零点に対応するリーマン面上の線形系の次元で表現するものである。ただ、一般には分かるのは重複度のみで、どの微分が消えないかについての具体的なことは特別な場合を除いて分かっていなかった。今回の研究で、KP階層のタウ関数の性質とシューア関数の性質を調べることにより、リーマンの特異点定理で予言される次数の微分で、零にならないものを一つみつけた。この結果を用いて、多変数シグマ関数がモジュラー変換で不変になるような正規化定数を与えることが出来た。 また、12月14-15日にワークショップ「Around Sato's Theory on Soliton Equations」を開催し、Alexander Zheglov氏(モスクワ)、Andrey Mironov氏(ノボシビルスク)を含む国内外の研究者7名に講演していただいた。特にZheglov氏のグループの最近の研究である、佐藤理論の高次元化と可換偏微分・差分作用素の構成につい集中的に議論した。参加者は30名ほどであった。このほかMironov, Zheglov両氏とは、Baker-Akhiezer加群の観点から佐藤理論の高次元化が理解できるかどうかについても議論し、それに関する研究は継続中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
昨年度の報告書で報告したように、研究の軸を研究目的の1から研究目的の2に移して研究行った。研究目的1についても打開策を模索して、転送行列の母関数(マスターT作用素)と可積分系との関係に関するZabrodinらの研究を勉強中であるが今のところ新しい進展はない。 研究目的2に関する研究については、研究実績の概要で述べたように比較的順調に進展したと考えている。ただ当初目的としていた超楕円シグマ関数の加法定理の別証明には未だ成功していない。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度と同様研究の軸は研究目的2とする。一昨年度までの研究で、可積分系の構造を用いた研究は、テータ関数の展開でウェイトに関する初期項を決定するのに特にに有効だということが分かった。これに対し昨年度の研究では、可積分系の観点からの研究は、テータ関数の次数に関する展開の初期項を研究するのにも使えるということが分かってきた。今年度はこの方向での研究を進め、テータ関数の次数に関する初期項を超楕円曲線以外、例えば(n,s)曲線などに対して具体的に決定することを目指す。そのためにシューア関数に対しても同様の問題を研究する。加法定理については、シグマ関数の極限であるシューア関数についてKP階層のタウ関数の観点から研究する。 研究目的2については転送行列の母関数と可積分系との関係を参考にして、母関数の観点からの研究を進めたい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
2013年12月に開催したワークショップに海外から招聘を計画していた研究者(一人)の招聘を、ご本人の都合がつかず、断念したためその分だけ当初予定した使用額を下回った。 次年度は、ウクライナのキエフでの国際ワークショップに出席発表予定で、研究費の繰越分はそのための旅費・滞在費に充てる予定である。また2015年2月に、津田塾大学に滞在予定のEnolski氏を囲んでワークショップをを開催し、海外からも関係する研究者数人を招聘する予定である。次年度の研究費から、国内外から招聘する研究者の旅費・滞在費を支出する。
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Research Products
(5 results)