2011 Fiscal Year Research-status Report
一般超幾何関数とモノドロミー保存変形による可積分系の大域的研究
Project/Area Number |
23540247
|
Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
木村 弘信 熊本大学, 自然科学研究科, 教授 (40161575)
|
Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2015-03-31
|
Keywords | 可積分系 / 超幾何関数 |
Research Abstract |
(1) 量子パンルベ系の特殊解の研究とその一般化. 量子パンルベ系は,パンルベ系のハミルトニアンを用いて正準量子化して得られるシュレディンガー方程式であるが,名古屋創氏はその系が位置変数に関する多項式解が,ガウスの超幾何積分やその合流型超幾何積分の被積分関数を種とする多重積分で表わされることを示した.名古屋氏との議論で,次の問題が重要であることが明確になった.上記の(2,4)-グラスマン多様体上の超幾何関であるガウスの超幾何や合流型超幾何を(2,n)-グラスマン多様体上の超幾何で置き換えて,それを種とする多重積分から量子ガルニエ系を決定することができるかという問題である.この問題の重要なステップは,多項式解の積分表示に付随した代数的コホモロジーを決定することがであるが,量子パンルベ2型に対する簡単な場合にそれを決定した.量子ガルニエ系を合流型の場合まで決定することはできていない.(2) グラスマン多様体上の(合流型)超幾何方程式のrigidity の判定.解析的な常微分方程式において,その局所的なデータである特異点における特性指数たちから,大域的なデータである微分方程式そのものが決まるかという問題がrigidityの問題である.それを測る尺度がrigidity指数であるが,(3,6)-グラスマン多様体上の超幾何方程式系の場合に,合流しない場合と合流型のもっとも簡単な場合に対応するガウスマニン系を決定し,さらにその系を1次元直線に制限して得られる常微分方程式のrigidity指数を決定した.その結果,(3,6)-グラスマン多様体上の超幾何方程式系の直線への制限はrigid ではないことが分かった.これは(2,n)-グラスマンの場合がrigidであることと状況が違うことを示している.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
量子Painleve系の特殊解の研究の中で,量子Painleve方程式の特殊解として現れる超幾何タイプの積分に付随する代数的cohomology群の具体的な決定を行う予定であったが,実際に実行できたのは,量子Painleve方程式 P2における簡単な場合のみであった.また,当初計画には入っていなかった,Grassmann多様体上の超幾何方程式系のrigidity indexを決定する問題に時間を取られたこともあって,本来のcohomology群の決定に多くの時間を使うことができなかった.ただ,名古屋氏との議論によって,量子Painleve系の多項式解を表わす超幾何タイプの多重積分を,(2,n)-Grassmann多様体上の超幾何で置き換えて,それを種とする多重積分から量子Garnier系(量子Painleve系の一般化)あるいはそのHamiltonianを決定することができるかという問題を設定できて共同研究を開始できたことは重要なステップである.
|
Strategy for Future Research Activity |
次年度以降の研究計画において,実現できなかった量子Painleve系の多項式解の積分表示に付随した代数的cohomology群の決定を行い,さらに(2,n)-Grassmann多様体上の超幾何で置き換えて,それを種とする多重積分に対するcohomology群の決定を行う.そのうえで,名古屋氏との共同研究によって,量子Garnier系のHamiltonianを決定することを実行したい.
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
上記の「今後の研究の推進方策」において述べたように,研究の推進は,研究者自身による計算実験,計算機による計算実験,共同研究者との議論によるアイデアの醸成がメインになる.したがって共同研究を推進するための旅費が主な研究費の使途である.また関連する分野の情報を収集したり,研究者を招聘して討論する機会を設けるなどの費用が必要である.これにほぼ70パーセント程度の研究費を使用する予定である.それに加えて研究の進行に伴って必要になる資料,書籍等の購入費用,情報機器の更新あるいは新規購入費用などに研究費を使用する予定である.
|