2011 Fiscal Year Research-status Report
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23540252
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Research Institution | Rikkyo University |
Principal Investigator |
筧 三郎 立教大学, 理学部, 教授 (60318798)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2016-03-31
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Keywords | 可積分系 / 特殊関数 / ソリトン / 超離散化 |
Research Abstract |
本研究は,これまでの可積分系研究で培われてきた手法を拡張することで,「特殊関数」の世界を拡張し,その適用範囲を広げることを目的としている。2012年度は,以下の1~3の3点について結果が得られた。1. 神経細胞のモデル方程式への超離散的アプローチ(大川豪氏(立教大学大学院生)との共同研究):離散可積分系の研究から生まれた「超離散化」という手法を,非可積分系に適用しようとする試みである。神経細胞のモデル方程式の一つであるMcKeanモデルから出発し,区分線形型の非線形項を,解の定性的性質を保つように逆超離散化することに成功した。2. Euler-Poisson-Darboux方程式の対称性の青本-Gelfand理論からの理解(三澤彰宏氏(立教大学大学院生)との共同研究):Euler-Poisson-Darboux方程式は,古くは19世紀の曲面論の研究に現れ,その後物理学への応用も見出されている。この方程式がSL(2)対称性等といった興味深い性質を持つことは以前から指摘されてきたが,本研究ではそれらの対称性を青本-Gelfand理論の立場から整理することに成功した。また,その立場から連立系に拡張し,その対称性を論じた。3. 立体魔方陣の有限幾何学的構成法(宮川文香氏(立教大学大学院生)との共同研究):魔方陣を構成する問題は,いわゆる「直交配列」の問題とも関係し,応用上の観点からも興味深い。本研究では,白川俊博氏によって構成された4次立体魔方陣の背後の有限幾何的構造を見出すことで,その構成法をよりサイズが大きい場合に拡張することに成功した。1~3以外にも,さらにいくつかのテーマについて,次年度以降に向けての準備的研究を行っている。一例としては,ソリトン方程式の逆散乱法の超離散化と,組合せ的表現論との関係を調べることが挙げられる(R. Willox氏(東大数理科学)との共同研究)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
離散可積分系の応用を見出すという目的に関しては,順調に研究が進んでいると言ってよい。反面,当初予定していたパンルヴェ方程式の拡張・およびその応用を見出すという研究に関しては,当初の想定ほどは研究が進んでいない。これは,別のテーマが予想よりも進んだためにそちらに重点をおいたためであり,来年度以降への課題としたい。
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Strategy for Future Research Activity |
今後も,当初の予定通りに以下の3つのテーマを中心に研究を進める。・離散可積分系,離散特殊関数の拡張と応用・パンルヴェ方程式の拡張と応用・多変数特殊関数の拡張と応用
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
国内で開催される研究集会(京都大学,九州大学等)に,共同研究者と共に参加し,関連分野の研究者と積極的に討論をする予定であり,そのための旅費が必要である。設備,備品に関しては大きな購入予定はないが,計算機関係の消耗品,文房具等の購入には使用する予定である。さらに,専門分野の書籍の購入にもあてる。
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