2012 Fiscal Year Research-status Report
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23540252
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Research Institution | Rikkyo University |
Principal Investigator |
筧 三郎 立教大学, 理学部, 教授 (60318798)
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Keywords | 可積分系 |
Research Abstract |
本研究は,可積分系,特殊関数の理論を拡張し,その応用範囲を広げることを目的としている。2012年度は,可積分系理論の微分幾何学への応用を中心に研究を行い、以下の2点について結果が得られた。 1. 中心アフィン曲面の可積分系理論による構成(Ralph Willox氏(東大数理科学),三谷浩将氏(立教大学大学院生)との共同研究):中心アフィン曲面の研究は,1910年のTzitzeicaの研究に端を発するものであり,可積分系とも深い関係を持つ。共同研究者のWillox氏は,Tzitzeicaが提出した方程式を特別な場合として含む「一般化Tzitzeica方程式」を提出した。そこで,その方程式の持つ幾何学的意味を明らかにし,対応する曲面を明示的に構成することを目的として研究を行った。本年度の結果としては,Willox氏の与えた6×6行列型Lax方程式と,中心アフィン曲面の構造方程式とを関係付けたことが挙げられる。この結果に関しては,九州大学で行われた研究集会で発表を行った。また,現段階では最終的な結果には達していないが,DKP階層(高崎の意味での「Pfaff-戸田階層」)のτ関数を用いて中心アフィン曲面の明示公式を与えることを試みており,部分的な結果が得られている。 2. 立体魔方陣の有限幾何学的構成法(宮川文香氏(立教大学大学院生)との共同研究):魔方陣を構成する問題は,いわゆる「直交配列」の問題とも関係し,応用上の観点からも興味深い。本年度は,昨年度の立体魔方陣の有限幾何的構成法を高次元に拡張することを試み,5次元の場合の構成法を与えた。この結果については,応用数理学会研究部会連合発表会において発表しており,現在論文を準備中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度は,微分幾何学への応用というテーマに関して,大きな進展が得られた。当初予定していたパンルヴェ方程式の拡張・およびその応用を見出すという研究に関しては,本年度は着手できなかったが,微分幾何的考察から突破口が得られるものと考えており,来年度以降に考察していく予定である。 また,連続関数での理論である逆散乱法と組合せ的表現論とを,超離散化によって直接結びつけるという研究については,本年度はあまり時間を割くことができなかったが,来年度には十分な時間をかけて取り組んでいく予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度大きく進展があった微分幾何学的側面への応用についての研究比率を増やし,当初に計画していた観点と関連づけて発展させていく。より具体的には,以下の2つのテーマについて研究を進める。 ・中心アフィン曲面論の視点からのパンルヴェ方程式の拡張 ・離散可積分系の視点からの中心アフィン曲面論の離散化
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
国内で開催される研究集会(京都大学,九州大学等)に,共同研究者と共に参加し,関連分野の研究者と積極的に討論をする予定であり,そのための旅費が必要である。また,関連分野の研究者との研究打合せが必要であるので,その際にも旅費が必要となる。設備,備品に関しては大きな購入予定はないが,計算機関係の消耗品,文房具等の購入には使用する予定である。さらに,専門分野の書籍の購入にもあてる。
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