2012 Fiscal Year Research-status Report
高時間分解高分散分光観測に基づく星震学の新しい展開
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23540260
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
柴橋 博資 東京大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (30126081)
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Keywords | 恒星物理学 / 恒星脈動 / 恒星スペクトル / 恒星大気 / 国際情報交流(英国) |
Research Abstract |
星震学における振動の検出は、高精度測光観測によるものと高分散分光観測によるものとがある。後者は、スペクトル線のドップラー効果によるスペクトル線のプロファイルの変化を検出する。A 型特異星の場合は、振動の動径方向の波長がスペクトル線形成層の薄さに匹敵する程短く、星震学によるこの手法でしか探れない研究が出来る。 平成23年度に引き続きA型特異星のスペクトル線輪郭の時間変動を記述する理論モデルを検討した。観測結果との不一致の意味を検討中である。また、6月に国立天文台すばる望遠鏡にて、A型特異星の高分散高時間分解能の分光観測を行なったが、天候に恵まれず不成功に終わった。 一方また、関連する特異星であるV652 Herのスペクトル線輪郭の時間変動を研究した。この星は、水素が欠乏しヘリウムが主たる大気のsdB星で、周期0.1日の脈動を示す。その脈動は、短時間(15分間)の内に著しい加速を示す特異なもので、衝撃波の伝播を示している。すばる望遠鏡のHDSによる高分散分光の観測に基づき、その脈動のモデルを詳細に検討した。 ところで、ケプラー宇宙望遠鏡により長時間に亘って得られ続けている極めて高精度測光観測データは、量的には従来のものを圧倒し、質的には従前の精度を遥かに凌駕しており、正に革命的なものと言って良い。しかし、露光30分のLC観測モードでは、A型特異星の極短周期の脈動の検出は出来ないと思われていた。ケプラー衛星は太陽系重心の周りを公転しているので、如何なる星からの光路長も公転と共に周期的に変動することの影響をきちんと考慮すると、ナイキスト周波数(サンプリング周波数の1/2)より高い脈動であっても正しく求めることが出来ることを実例を挙げて証明した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成24年度は、当初の計画にはなかった着想を得、その方向での成果を得た。研究成果は、国際学術誌(MNRAS)に電子版では既に出版され、紙版でも印刷中である。一方、実観測の試みは、6月に国立天文台すばる望遠鏡の観測時間を取得してA型特異星の高分散高時間分解能の分光観測を行なったが、天候に恵まれず不成功に終わった。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度は、A型特異星のねじれ振動モードの定式化を進めて取り扱える様に拡張する。 また、質量や進化過程の異なる星を扱い、色々な元素のスペクトル線を扱える様に拡張する。更に、観測に見られる特徴的なスペクトル線の変動を説明することを目的として、A型星大気上層に伝わる衝撃波によるスペクトル線の変動を追える様にする。 当初の研究計画を拡張し、連星中のA型脈動星の振動数変調に着目して、そこからどんな情報が得られるかを研究することを新たに加える。また、スペクトル線変動の研究を応用して、B型星の活動機構についての理論的研究を新たに加える。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
海外研究協力者との研究の擦り合わせを行なうために、招聘旅費として一部を使用する。また、国内外での研究発表のために旅費を使用する。論文の投稿費にも使用する。また、計算機環境を整えるために備品を購入する。
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[Presentation] Super-Nyquist asteroseismology2012
Author(s)
Kurtz, D. W., Murphy, S. J., Shibahashi, H.
Organizer
Progress in Physics of the Sun and Stars: A New Era in Helio- and Asteroseismology
Place of Presentation
箱根
Year and Date
20121125-20121129
Invited
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[Presentation] Frequency modulated stars2012
Author(s)
Shibahashi, H., Kurtz, D. W.
Organizer
Kepler Asteroseismic Science Consortium Fifth Workshop
Place of Presentation
Balatonalmadi, Hungary
Year and Date
20120618-20120622
Invited