2012 Fiscal Year Research-status Report
多波長観測による急速に成長する埋もれた巨大ブラックホールの完全探査
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23540265
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
上田 佳宏 京都大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (10290876)
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Keywords | 活動銀河核 / ブラックホール / X線 |
Research Abstract |
最も深いX線探査であるChandra Deep Field Southのデータを用いて、遠方宇宙における埋もれた活動銀河核の存在量について制限を与え、現在の宇宙に比べて赤方偏移とともに緩やかにその割合が増大していることを突き止めた(Brightman & Ueda 2012)。巨大ブラックホールを囲むトーラス構造による吸収と反射を考慮したX線スペクトルを実データに当てはめることで、トーラスの吸収量や開口角という物理パラメータを個々の天体から制限することに成功した。このさい、光子統計が少ないことによるばらつきや系統的効果をシミュレーションを行うことによって補正し、信頼できる統計結果を導いた。 また、XMM-Newton衛星のデータから、特徴的な軟X線スペクトルを示す、急速に成長しつつあると考えられる活動銀河核を発見した(Terashima et al. 2012)。Swift/BATによる硬X線全天サーベイと、AKARI衛星による赤外線全天サーベイのカタログ相関から、吸収を受けたAGNと受けていないAGNの間でX線光度に対する中間赤外線光度の比が同程度であることを発見し、トーラスの内部構造が非一様であるという示唆を得た(Ichikawa et al. 2012)。「すばる-XMMニュートンディープサーベイ」で見つかったX線天体のうち、赤方偏移が3を越えるAGNに着目し、詳細なX線スペクトルの解析を行うことで、その空間密度および吸収を受けたAGNの割合を決定した(Hiroi et al. 2012)。光赤外の共同研究者と協力して、赤方偏移が1.5程度にある活動銀河核のブラックホール質量関数を決定し、現在の宇宙と比べてより大きなブラックホールが活動性をもつことを確認した(Nobuta et al. 2012)。これらの最新の結果を含めたレビュー講演を、3回の国際会議にて行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
予定どおり、SXDSやCDFSといった多波長深サーベイのデータを用いた遠方宇宙における「埋もれた」AGNの探査と、全天サーベイを用いた埋もれたAGNについての研究の両方を順調に進めることができ、それぞれのテーマで重要な論文を出版することができた。また実際に、急速に成長しつつある巨大ブラックホールの明確な例を発見できた意義も大きく、本研究目的のための期待どおりの進展があったといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度から進めてきた、全天X線監視装置(MAXI)が3年間にわたって取得した全天X線サーベイデータの総解析を、最終的に完成させる。X線天体カタログの作成を行うとともに、各天体の変動の性質を詳細に調べることで、激しい時間変動を示すと期待される、急速に成長しつつある巨大ブラックホールの無バイアス探査を試みる。また、SXDS、CDFS、MAXIなど面積と感度の組み合わせの異なる多数のサーベイ結果を統合することで、埋もれたAGNの宇宙論的進化を過去最高の精度で明らかにする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
全天X線監視装置による探査結果を含めた、活動銀河核の宇宙論的進化の研究は、その光度関数の決定という形でいよいよ最終段階に移りつつある。SXDS、CDFS、COSMOSなど多波長深サーベイのデータ解析を共同研究者と効率よく進めるために、海外にて共同研究と情報収集を行う。得られた成果を論文化するとともに、国際会議にて発表する。
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Research Products
(10 results)