2012 Fiscal Year Research-status Report
巨大ブラックホール近傍の構造と進化:未解明領域の降着とフィードバック過程
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23540267
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
和田 桂一 鹿児島大学, 理工学研究科, 教授 (30261358)
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Keywords | 巨大ブラックホール |
Research Abstract |
(1) 中心核近傍 1 pc~ 10pc領域: X線放射を受けたトーラス領域星間ガスの分布、組成を明らかにするため、3次元RHDコードに、輻射圧、 X線加熱を組み込み、国立天文台および東北大学のスーパーコンピュータSX-9で輻射流体計算を行い、radiation-driven fountain (輻射駆動噴水)という新しいメカニズムによる準定常なトーラス構造が自然に形成されることがわかった。Wada (2012)として出版した。 (2) 大須賀、野村らとBH近傍の降着円盤領域で輝線で駆動された高速ウィンドの構造を理論的に調べ、BAL (Broad Absorption Line) quasarとの関係明らかにした。Nomura et al. (2013)として印刷中。多次元輻射流体計算コードの開発、テスト計算を行った。 (3) 重力多体ー流体計算によって銀河円盤における動的渦巻き構造の出現のメカニズムを明らかにした(Baba et al.2012)。 (4) 川勝らとSMBHの宇宙論進化モデル(Kawakatu & Wada 2008,2009)を改良し、クェーサーの光度進化についての理論モデルについての議論を引き続きおこなった。すばる望遠鏡/HSCによる広域サーベイ観測(SWANS)の解析と比較する準解析モデル(SNAWS)への組み込みについて、「SWANS理論班会議」等で議論、検討を進めた。 国際天文学連合総会(北京)、台湾ASIAA、韓国ソウル国立大学、韓国済州島等で招待講演を行い、研究成果の発表を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
主な4つの研究目的、すなわち(1) 中心から0.01pc領域の「輝線で駆動されたウィンド」、(2) 10pc領域のX線放射を受けたトーラス 領域の多相星間ガスの構造・組成、(3) 銀河スケールの力学的擾乱による質量供給、の6桁にわたるスケールの計算を組み合わせ、銀 河スケールからの質量供給率と、SMBHへの降着率の関係を明らかにし、(4) 分子ラインなどの輻射輸送計算によって、ALMAに向けた理 論予測を行う、に関して、(1)-(3)は当初計画どおり、順調に計算コードの改良、テスト計算が進み、論文も出版した。(4)については、国立天文台のスーパーコンピュータのリプレースに伴い、現在コードの最適化を進めているところである。
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Strategy for Future Research Activity |
星形成および中心核からの輻射の影響を含めたSMBHの宇宙論進化理論モデルの構築を進め、SWANSサーベイの初期結果との比較のために、準解析モデルSNAWSへの組み込みを行う。ドイツマックスプランク研究所(MPE)の理論研究グループ(M. Schartmannら)、および観測グループ(R. Genzelら)と銀河中心核近傍の構造に関して議論を行う。7月にハイデルベルグで開催される国際会議で発表を行う。また、研究目的の(4) ALMAを用いた観測の予測のために、特にトーラス領域の輻 射流体計算結果の星間ガスの物理状態を用いた、非局所熱平衡3次元輻射輸送計算を分子、原子輝線(CO, HCN, HCO+, CII等)に対し て行う、を進める。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
海外出張がアジア中心だったこと、PC部品が当初見込みよりも価格が下がったこと、論文投稿料を別の機関から支出できたためなどの理由により繰越金が発生した。 次年度は、繰越金を含め、東北大学サイバーセンターのスー パーコンピュータ SX-9の計算負担金、ドイツMPEおよびMPA研究所、オランダカプタイン研究所の連携研究者との研究打ち合わせのため の外国旅費、国立天文台、筑波大学、東京工業大学等の連携研究者との研究打ち合わせ、および日本天文学会、北海道大学での研究会等での発表のための国内旅費、計算結果の解析のための解析用PC部品およびデータ保存のためのハードディスク部品、解析用ソフトウエアの更新に用いる。
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