2011 Fiscal Year Research-status Report
銀河のダイナモ機構:宇宙線と磁場が駆動する非線形ダイナミクスの検証
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23540274
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Research Institution | National Astronomical Observatory of Japan |
Principal Investigator |
工藤 哲洋 国立天文台, 理論研究部, 助教 (60413952)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2015-03-31
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Keywords | 天文 / 宇宙物理 / 理論天文学 / 流体 |
Research Abstract |
渦巻き銀河には渦巻き構造に沿うような形で大局的な磁場が観測されている。しかし、銀河における磁場の起原やその維持生成機構に関してはまだよくわかっていない。私は渦巻銀河における磁場の維持生成機構には、宇宙線の影響を受けたパーカー不安定性の非線形発展が重要な役割を担っていると考えている。そこで、今年度はまず宇宙線の影響を取り入れた磁気流体力学数値シミュレーションコードを新たに作成し、そのコードを用いて銀河におけるパーカー不安定性の非線形発展を調べた。パーカー不安定性の数値シミュレーションにおいては銀河円盤における銀河面の対称性を仮定しない計算を行った。その結果、宇宙線の影響が強い場合と弱い場合とで速く成長するモードの対称性に若干の違いがあることがわかってきた。宇宙線の影響が強い場合には銀河面に対して対称的なモードもそうでないモードもほぼ同じように成長するが、宇宙線の影響が弱い場合には対称的なモードはあまり成長しなかった。実際の銀河磁場においても銀河面での対称性が異なる場合が観測されており、今回の結果はそのことと関係があるかもしれない。また、数値シミュレーションの結果から得られたパーカー不安定性の非線形段階において、宇宙線の影響が強い時は磁気ループが縦に伸びた構造を示し、宇宙線の影響が弱い時は横に伸びた構造を示すことを確認した。また、磁気ループは両隣のループと磁気リコネクションを起こしていた。このような結果は以前のパーカーの予想と一致しており、宇宙線が銀河ダイナモに影響を与える可能性が強いことを示唆していると思われる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通り、宇宙線の影響を取り入れた磁気流体力学数値シミュレーションコードを新たに作成し、そのコードを用いて銀河におけるパーカー不安定性の非線形発展を調べることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
まず、23年度で作成したコードを3次元コードに拡張する。そして、そのコードを用いて3次元のパーカー不安定性の非線形発展を調べる。その後、回転の効果を取り入れる。銀河円盤の一部を切り出した局所的な近似の範囲内で、パーカー不安定性と回転の効果によって生じる磁場の増幅過程を調べる。宇宙線の効果を含めた場合と含めなかった場合とを比較し、磁場の増幅に宇宙線がどのように寄与しているのかを調べ、その物理機構を明らかにする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
主に研究会参加のための旅費及び研究打ち合わせのための旅費として用いる。また、物品費としてはデータ解析のためのソフトウェアの購入に用いる予定。また平成23年度の残金のうち約3万円はPCを当初の予定よりもやや安く購入できたために生じた。この部分を含めて平成24年度の物品費としてPC周辺機器の増強に使用する。
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Research Products
(2 results)