2012 Fiscal Year Research-status Report
銀河のダイナモ機構:宇宙線と磁場が駆動する非線形ダイナミクスの検証
Project/Area Number |
23540274
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Research Institution | National Astronomical Observatory of Japan |
Principal Investigator |
工藤 哲洋 国立天文台, 理論研究部, 助教 (60413952)
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Keywords | 天文 / 宇宙物理 / 理論天文学 / 流体力学 |
Research Abstract |
渦巻き銀河には渦巻き構造に沿うような形で大局的な磁場が観測されている.しかし,銀河における磁場の起源やその維持生成機構に関してはまだよくわかっていない.私は渦巻き銀河の磁場の維持生成機構には,パーカー不安定性の非線形発展が重要な役割を担っているのではないかと考えている.また,銀河の星間空間には高エネルギーの粒子である宇宙線が存在し,パーカー不安定性の成長に影響を与えていると考えられている.そこで,私は宇宙線の影響を取り入れた磁気流体力学数値シミュレーションコードを作成し,そのコードを用いて星間ガスにおけるパーカー不安定性の非線形発展を調べている. 昨年度に作成したコードを用いて,引き続き銀河円盤における銀河面対称性を仮定しない計算を行った.宇宙線の影響が弱い場合にはこれまで知られていたように銀河面に対して対称的でないモードが速く成長する.しかし,宇宙線の影響が強い場合には対称的なモードもほぼ同じような早さで成長することを色々なパラメータにおいて確認した.しかし,より時間が進行すると,最終的には銀河面に近い領域では銀河面に対して対称的でないモードが支配的になっていくことも確認した. また,共同研究として,大局的な銀河円盤における磁場増幅の数値シミュレーションの研究に参加した.その結果,銀河面からパーカー不安定性で磁束が抜けていくことが,磁場の増幅の周期性や銀河面での対称構造に影響を与えていることを確認した.この共同研究の数値シミュレーションにはまだ宇宙線の影響が取り入れられていないが,宇宙線の影響があった場合の重要性を確認した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
銀河に磁場の起源やその維持生成機構を調べるため,宇宙線の影響を取り入れた磁気流体力学数値シミュレーションコードを作成し,そのコードを用いて星間ガスにおけるパーカー不安定性の非線形発展を調べている.当初は予想していなかった銀河円盤における対称モードの成長率の違いに関して確認を行った. 一方で,予定していた3次元コードの完成には至らなかった.その理由の一つは,2次元の計算から上記のような予想していなかった結果を得たため,その結果の確認作業を優先させたことである.もう一つの理由は,3次元計算の場合は,計算量の問題から,宇宙線を解く部分を2次元とは異なる計算方法にした方がよいかもしれないと考え直したためである.その異なる方法を行うための予備的な計算は行ったが,コードの完成には至らなかった.
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Strategy for Future Research Activity |
宇宙線の影響を取り入れた磁気流体力学数値シミュレーションコードを3次元に拡張する.そのコードを用いて,星間ガスにおけるパーカー不安定の非線形発展を調べる.2次元では調べられなかった磁力線に垂直方向の揺らぎがある場合,どのようなモードが非線形段階で卓越するかを調べ,その物理機構を明らかにする.その後,回転や放射冷却の影響を含めたい. 今年度の後半には,東京大学大学院と千葉大学大学院の学生の中に共同研究者を得た.来年度は彼らとの共同研究によって研究を推進させる.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
主に研究会参加や研究打ち合わせのための旅費として用いる.また,物品費としては,ハードディスク,携帯用ノートパソコンやソフトウェアの購入などに用いる予定である.なお,平成24年度分の次年度使用額(B-A)の大半は,平成24年度末の出張旅費として既に執行されているが,出張が3月末であったために事務処理上の理由で繰り越されている物である.実際の残金の約6,000円は平成25年度分の都内出張などに使用する予定である.
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Research Products
(3 results)