2012 Fiscal Year Research-status Report
太陽大気での磁気リコネクション現象におけるエネルギー輸送の観測的研究
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23540278
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Research Institution | Japan Aerospace Exploration Agency |
Principal Investigator |
清水 敏文 独立行政法人宇宙航空研究開発機構, 宇宙科学研究所, 准教授 (60311180)
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Keywords | 太陽 / 磁気リコネクション / 浮上磁場 / 軟X線 / 極紫外線 / CMOSセンサ / 相関処理 / 分光器 |
Research Abstract |
本研究課題は、「磁気リコネクション」「磁気的波動」などの物理機構が「高温コロナの成因」にどのように働いているのかを明らかにするために、太陽大気(光球~彩層~コロナ)でのエネルギー輸送の定量的な診断という観点からのアプローチで取り組んでいる。アプローチとして、具体的に3つの小課題を設定している。以下に各課題で得られた研究実績をまとめる。小課題(1)磁気リコネクション現象の代表である「マイクロフレア」は、激しいコロナ加熱が起きる活動領域内で頻繁に観測される。2009年12月30-31日に観測に成功した磁気浮上領域でも「マイクロフレア」が頻繁に発生し、大量の高温プラズマの生成が、軟X線・極紫外線でとらえられている。異なる温度で見たプラズマの量について、「ひので」X線望遠鏡および極紫外線分光装置の連続的な時間履歴データから調べた。「マイクロフレア」の発生によって、ドップラー速度・擾乱がコロナ構造の足元で観測される場合、生成されたプラズマの温度は高く、軟X線(>300万度)が極紫外線(100-200万度)に比べ大きく卓越することを観測的に明らかにした。小課題(2)波動によるエネルギー輸送を定量的に診断することを可能とする次世代スペース光学偏光観測の実現には、0.1秒角の高解像度が必須であり、衛星擾乱による画像ぶれを抑える焦点面像安定化装置の性能が重要である。特に骨格となる「コリレーション・トラッカー」の高速化が重要で、その実現を目指したCMOSセンサ回路およびリアルタイム処理を行うDSP回路の電気基板の設計を進め、その設計に基づいて基板の試作品を製作した。小課題(3)彩層からコロナに流れるエネルギーを定量的に診断する高スループットの紫外線分光装置について、ドイツ・マックスプランク太陽圏研究所のTeriaca博士らと討議を進め、次世代太陽観測衛星に搭載べき装置の提案書を完成させた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度当初時点において、やや遅れていた課題(2)は、本年度の研究によって、実現に必要となる電気基板の設計・製作を完了するまで進捗できた。高速撮像を行うセンサーとして、CMOIS社(ベルギー)のCMVシリーズのCMOSセンサを選定した。このセンサ選定によって周辺制御およびデータ処理回路の全体構成も設計可能となり、本年度に集中的にセンサー基板およびDSP基板(コンピュータ制御回路)の電気回路をメーカ技術者の助けを借りて設計した。この設計結果に基づいて、センサー基板およびDSP基板を製作し、当初の予定ペースまで研究が進展できた。また、課題(1)は当初の予定どおりに研究が進捗しており、課題(3)も当初計画どおりに、ミッション提案ができるレベルの科学的かつ技術的な検討が完了した。
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Strategy for Future Research Activity |
課題(1)磁気浮上活動を伴った活動領域を約2日にわたって「ひので」のX線望遠鏡と極紫外線分光装置が継続的に観測に成功した。この取得データの解析を継続する。磁気リコネクション現象と考えられる「マイクロフレア」の頻発によって高温プラズマの量が時間と共に大きく変動するが、その生成されるプラズマ量と足元で観測されるドップラー速度・乱流速度との間に相関関係が見えてきている。その観点を発展させ、「マイクロフレア」発生と高温コロナを構成するプラズマの温度組成の関係を明らかにする。この研究によって「マイクロフレア」によるコロナへのエネルギー輸送の一端が見えてくると期待している。最終的に本年度中に学術誌に公表する論文をまとめたい。 課題(2)昨年度に製作した「コリレーション・トラッカー」のDSP基板に関して、CMOSセンサーを制御し高速に連続画像データを取得することができるレベルまで開発を進める。DSP基板に搭載されたFPGAチップに論理回路の作り込みを行い、DSPで動かすソフトウエアを開発する。連続データの取得ができるようになると、「コリレーション・トラッカー」の性能評価のためのデータ取得・評価に入りたい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
「今後の研究の推進方策」に述べた計画のうち、次年度の研究費の多くは、小課題2の実施を円滑に進めるために使用する予定である。本年度製作した「コリレーション・トラッカー」のDSP基板上にある、CMOSセンサーとのインターフェースを司るFPGAチップ内の論理回路の設計・製作を行う。この論理回路は、CMOSセンサーに撮像指令を行う制御およびCMOSセンサーから高速出力される画像データをDSP内のメモリーに格納する処理を行う。この設計には、FPGA設計の豊富な知識・経験が必要であり、メーカに設計等を依頼する予定である。また、DSPに搭載するソフトウエアを開発するために必要となる環境ツールをDSPメーカから購入予定である。また、性能確認を行うために、実験室内に「コリレーション・トラッカー」およびジッター発生源を含む光学系を作り、計測を行う。それに必要な光学素子等の購入を予定する。
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[Journal Article] A Laboratory Experiment of Magnetic Reconnection: Outflows, Heating, and Waves in Chromospheric Jets2012
Author(s)
Nishizuka, N., Hayashi, Y., Tanabe, H., Kuwahata, A., Kaminou, Y., Ono, Y., Inomoto, M., and Shimizu, T.
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Journal Title
The Astrophysical Journal
Volume: 756
Pages: 152 (11pp)
DOI
Peer Reviewed
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[Journal Article] Horizontal flow fields observed in Hinode G-band images II. Flow fields in the final stages of sunspot decay2012
Author(s)
Verma, M., Balthasar, H., Deng, N., Liu, C., Shimizu, T., Wang, H., Denker, C.
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Journal Title
Astronomy and Astrophysics
Volume: 538
Pages: A109
DOI
Peer Reviewed
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