2013 Fiscal Year Research-status Report
太陽大気での磁気リコネクション現象におけるエネルギー輸送の観測的研究
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23540278
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Research Institution | Japan Aerospace Exploration Agency |
Principal Investigator |
清水 敏文 独立行政法人宇宙航空研究開発機構, 宇宙科学研究所, 准教授 (60311180)
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Keywords | 太陽プラズマ / 磁気リコネクション / 太陽フレア / 磁場 / CMOSセンサ / 相関処理 |
Research Abstract |
本研究課題は、「磁気リコネクション」が太陽大気のダイナミックスや加熱においてどのように働くかを明らかにするために、太陽大気(光球~彩層~コロナ)でのエネルギー輸送の定量的な診断という観測的アプローチから取り組んできた。具体的に3つの小課題を設定し、2013年度はそのうち2つの課題に重点的に取り組んだ。 小課題(1) フレアが解放する磁気エネルギーがどのような輸送過程によって太陽大気内に蓄積され、「磁気リコネクション」が駆動される条件を作るかという点を理解するために、「ひので」で得られる太陽表面(光球)での物質の流れに注目した。2012年3月7日に発生した大規模フレア(Xクラスフレア)のエネルギー解放場所について、磁気中性線に沿って形成された水平磁場に沿って高速な物質流が発生していること、その物質流が磁気エネルギーの蓄積過程や爆発の駆動を起こし易い磁場構造を作り上げる役割を果たす可能性を明らかにした。 小課題(2) 高解像度で「磁気リコネクション」や「波動」によるエネルギー輸送の現場を定量的に診断することを可能にする0.1秒角の高解像度をもつ次世代スペース光学偏光望遠鏡の実現が早期に期待される。その性能実現に必要となる、高速撮像・画像相関処理により画像ズレをリアルタイムに検出する「コリレーション・トラッカー」の高速化を試作開発による検討した。高速撮像はCMOSセンサで実現し、センサを制御するFPGAのロジック設計を実施した。2012年度に製作したDSP回路の電気基板に、ロジックを組み込んだFPGAを搭載し、約1500Hzで連続画像の取得に成功した。また、高速化の限界速度についても機上検討し、約2000Hzであることも明らかにした。この性能は、0.1秒角の高解像度をもつスペース望遠鏡の実現に向けた大きなステップである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
磁気リコネクションが含まれる太陽大気プラズマのダイナミクスにおけるエネルギー輸送の様子を観測的に理解することを主眼において、(1)「ひので」観測に基づいた磁気リコネクション現象の研究、(2)0.1秒角の次世代スペース光学偏光観測の実現を目指した像安定化機構の高帯域化の研究、(3)高時間分解能・高解像度のEUV輝線スペクトル観測の実現を目指した研究、を課題に設定して研究を進めてきた。課題(3)は、2011-2012年度に紫外線高感度分光望遠鏡の科学及び装置設計検討を海外研究者と共同で行い、次世代太陽観測衛星Solar-Cに対して最適な紫外線分光望遠鏡を提案し、Solar-Cに搭載予定の観測装置(EUVST)のモデルとなっている。課題(2)は、焦点面検出器上に投影された画像のぶれを補償する像安定化システムを望遠鏡内部に持つことが必須であるが、安定化の制御に必要な焦点面でのぶれ量を検出する「コリレーション・トラッカー」の高帯域(200Hz程度)化を目指して、宇宙機搭載が見込めるCMOSセンサを用いた高速CMOSカメラの制御・処理回路の開発研究を進めた。2012年度および2013年度にCMOSカメラ制御処理回路の開発が急速に進み、高速撮像で画像取得する回路を製作し完成させた。実現できたCMOSセンサからの読み出し速度は1490フレーム/秒で、宇宙用部品を用いた場合にボトルネックとなる回路部位を特定した。課題(1)は、「ひので」観測に基づく太陽大気ダイナミックス、その核心で働く「磁気リコネクション」を主軸においた観測研究が進め、特筆すべき成果も得られ、査読論文や国際会議における招待講演等の機会を得て成果発表している。
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Strategy for Future Research Activity |
設定した3つの小課題にうち、課題(3)は、本年度JAXAに公式にミッション提案する「SOLAR-C」衛星計画の中で、紫外線分光望遠鏡(EUVST)として重要なミッション望遠鏡として搭載が想定され、今後の研究の道筋が出来た。課題(1)は、「ひので」の搭載望遠鏡を用いて太陽活動期のダイナミックスやフレアに関する観測を推進して、「磁気リコネクション」現象におけるエネルギー輸送を主眼においた観測的研究をさらに深める。本年度は本研究課題の最終年度にあたるため、2013年度までに得られた科学成果について査読論文として発表することが重要である。大規模フレアで発見した光球の高速な物質流がフレアのエネルギー蓄積・解放過程で重要な役割をする可能性を示す成果、「マイクロフレア」の頻発によって時間と共に大きく増加する活動領域の高温プラズマの量と、マイクロフレア足元で観測されるドップラー速度・乱流速度との間に相関関係に関する成果について、査読論文として発表する予定である。課題(2)については、高速CMOSカメラ処理回路に関する開発研究が順調に進捗し、「コリレーション・トラッカー」の高帯域化への目処が2013年度に付いた。本年度は、この試作回路を用いて計測実験を実験室環境で行い、CMOSカメラが取得する連続画像の性能について定量的な把握を行い、「コリレーション・トラッカー」として機能するためのリアルタイム画像相関計算に関するアルゴリズムの検討を進める予定である。この検討は、0.1秒角の高解像度をもつスペース望遠鏡の実現に向けた開発研究を加速させるものと考えている。
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[Journal Article] The Hinode spectro-polarimeter2013
Author(s)
Lites, B.W., Akin, D.L., Card, G., Cruz, T., Duncan, D.W., Edwards, C.G., Elmore, D.F., Hoffmann, C., Katsukawa, Y., Katz, N., Kubo, M., Ichimoto, K., Shimizu, T., Shine, R.A., Streander, K.V., Suematsu, Y., Tarbell, T.D., Title, A.M., Tsuneta, S.
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Journal Title
Solar Physics
Volume: 283
Pages: 579-599
DOI
Peer Reviewed
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[Journal Article] Properties of a decaying sunspot2013
Author(s)
Balthasar, H., Beck, C., Gomory, P., Muglach, K., Puschmann, K.G., Shimizu, T. and Verma, M.
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Journal Title
Central European Astrophysical Bulletin
Volume: 27(2)
Pages: 435- 446
Peer Reviewed
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[Journal Article] Evidence for hot fast flow above a solar flare arcade2013
Author(s)
Imada, S., Aoki, K., Hara, H., Watanabe, T., Harra, L.K., and Shimizu, T.
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Journal Title
The Astrophysical Journal
Volume: 776
Pages: L11
DOI
Peer Reviewed
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[Presentation] LEMUR/EUVST: the high spatial and temporal resolution spectrograph for the Solar C mission2013
Author(s)
Teriace, L., Doschek, G.A., Harra, L.K., Korendyke, C., Schuhle, U., Shimziu, T. and the LEMUR/EUVST team
Organizer
6th coronal loops workshop
Place of Presentation
La Roche-en-Ardenne, Belgium
Year and Date
20130625-20130627