2013 Fiscal Year Research-status Report
格子QCDによる重いクォークを含むエキゾチックなハドロン原子核系の研究
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23540284
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
佐々木 勝一 東北大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (60332590)
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Keywords | 量子色力学 / 格子ゲージ理論 / ハドロン理論 / エキゾチックハドロン / チャーモニウム / ボトモニウム |
Research Abstract |
当該年度は、前々年度に提唱したBethe-Salpeter振幅から有限クォーク質量でのクォーク間ポテンシャルの導出に関する方法について、格子間隔がゼロとなる連続極限に関する系統誤差や、格子体積が有限なことから生じる有限体積効果による系統誤差などについて、新しい方法の信頼性をより高める詳細な研究を行った。この新しい方法において特異な研究成果のひとつである、格子QCDによってクォーコニウムを構成する「クォークの運動学的な質量」をスピンの異なるクォーコニウム波動関数の遠方での振る舞いの差から決定することに関して、この方法で定義されたクォークの質量に対してもきちんと連続極限が存在し、それが現象論的にクォークポテンシャル模型などで利用されている模型のパラメータとしてのクォーク質量の値に近いことが確認することができた。このことはクォークポテンシャル模型に必要な全ての情報を格子QCD数値計算によって、強い相互作用の第一原理から完全に決定することが可能となることを意味している。また格子間隔の非常に細かい格子計算を遂行して、チャームクォークからボトムクォークよりもやや重い領域までの広範な有限クォーク質量のデータを系統的に解析し、スピンに依存しない中心力ポテンシャルだけでなくスピンに依存するスピンースピン相互作用に関するポテンシャルについても、クォーク質量が無限大の極限に対応する、Wilsonループを利用して得られる静的なクォーク間ポテンシャルおよびその相対論的な補正項として現れるスピンースピン相互作用が、極限として再現できていることを示せた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の研究計画にはなかったが、本研究課題の実施により新しいアイデアとして提案した、Bethe-Salpeter振幅から有限クォーク質量でのクォーク間ポテンシャルを導出する方法(Bethe-Salpeter振幅法)の有用性を当該年度においてより詳細に検証できた。またこのBethe-Salpeter振幅法により得られる、精密化したクォーク間ポテンシャルを利用したエキゾチック中間子と標準的なクォーク・反クォークで構成された中間子の選別のための道筋がより現実的なものとなった。当該年度中に論文として出版することが叶わなかったが、この新しい方法の応用面でも着実に成果があがりつつあり、来年度のさらなる研究の進展にはずみがついた。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに論文としてまとめきれていないBethe-Salpeter振幅法の応用面での多く成果について着実に論文としてまとめていく必要がある。またBethe-Salpeter振幅法の確立をめざして多くの計算資源を注ぎ込んだ結果、前年度に提唱した別のアイデアである、一般化した境界条件(ツイストされた境界条件)を用いた拡張されたルシャーの有限体積法による重いクォークを含むエキゾチックな中間子の探索に関する数値計算が当該年度ではできなかった。今後の研究では、この後者のアイデアに重きを置いた数値計算を重点的に行ないたい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当該年度より高エネルギー加速器研究機構の大型シミュレーション研究を利用して、計算資源として超並列計算機BlueGene/Qを本格利用することができた。そのため当初予定していたグラフィクスカード(GPU)を用いたGPU並列計算機の利用を視野に入れた計算資源の確保の緊急性が薄れ、当該年度の研究経費によるGPUの購入を見合わせたため次年度使用額が生じた。 当該年度までに得られた研究成果をベースに次年度の研究計画も広がりをみせ、計算資源の拡充も必須である。今後も理化学研究所情報基盤センター、高エネルギー加速器研究機構、筑波大学計算科学センターなどの公募研究によるスパコン利用を継続して活用する必要があり、これらのスパコンの活用に際しては理化学研究所の初田量子ハドロン研究室グループ格子QCD研究チームとの情報の交換やさらなる研究の連携のための綿密な研究打合せも次年度において、当該年度と同様引き続き行なう。また、これまで得られた膨大な計算結果を解析するためのサーバーの構築に際しての研究経費の活用も考えている。
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