2011 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23540285
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
大栗 博司 東京大学, 数物連携宇宙研究機構, 主任研究員 (20185234)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 素粒子論 |
Research Abstract |
素粒子のアクシオン模型は、強い相互作用によってCPの破れが起き過ぎないようにするために考え出された。アクシオン粒子は宇宙の暗黒物質の候補でもあり、その検出には様々な方法が試みられてきた。大栗は、AdS/CFT対応の研究から、強電場をかけたときにアクシオン場が真空の相転移を起こすことに気がつき、これを使った新しい検出方法があるのではないかと考えた。しかし、これまでの実験や観測から知られているアクシオンの質量や電磁場との相互作用についての制限を使って見積もると、必要とされる電場が大きすぎて、この方法でアクシオンを検出するのは難しいという結論になった。ところが、物性研究所の押川さんとの議論の中で、転機が生まれた。最近物性の分野で注目されているトポロジカルな絶縁体では、磁気秩序の振動から素粒子のアクシオン場と似た振る舞いをする自由度が現れる。さらによいことには、自然によってパラメータが決定されているはずの素粒子のアクシオンと異なり、物性の系では 不純物のドーピングを調節するなどの方法でパラメータを調整することができる。そこで、詳しく調べて見ると、トポロジカルな絶縁体や通常の絶縁体でも、ドーピングの仕方を調節して臨界点に近づけてやれば、アクシオン場の有効質量が小さくなって、電場による相転移現象が現在の物性実験の現在技術で観測できそうだということがわかった。また、この研究の過程で、アクシオン場の引き起こす不安定性についての理論的理解も深まった。それをまとめたのが論文で、Physical Review Lettersに受理され、Editors' Choiceにも選ばれた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
上記の研究は、素粒子論の方法の強相関系への応用という「研究目的」に沿ったものであったが、アクシオンの物理の物性理論への応用という思いもかけない方向に研究が開けた。当初の研究計画とともに、この新しい方面の研究も追及する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
現在、AdS/CFT対応を使ったホール粘性度の計算などを行っている。この研究は、数ヶ月以内にまとめられる予定である。また、アクシオンが有効理論に現れる物性系の研究もさらに追及する予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
6月にイスラエルで開かれる会議に参加し、これまでの研究成果を発表して、関連する分野の研究者と議論をする。また、IPMUに共同研究者を呼び寄せて、研究をされに推進する。研究費は主としてそのための旅費などにあてる。
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