2011 Fiscal Year Research-status Report
原子核密度汎関数理論で解明する弱束縛中性子の集団ダイナミックス
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23540294
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
松尾 正之 新潟大学, 自然科学系, 教授 (70212214)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 中性子過剰原子核 / 対相関 / 二中性子移行 / 双極子励起 / 準粒子共鳴 |
Research Abstract |
1.スキルム型密度汎関数を用いたHartree-Fock-Bogoliubov理論と連続状態QRPA理論を用いて、Sn,CaおよびNi同位体における異常対振動と対移行を系統的に分析した。Snについては、Sn134-140の異常対振動モードの詳細な分析結果を論文出版した。さらに安定核での巨大対振動モードも分析し、異常対振動モードとの連続性を明らかにした。Ca,Ni同位体では、集団性の高い異常対振動は現れず、弱束縛軌道がp軌道ではなくs軌道であることによる違いからに起因することを明らかにした。また、定量的な実験検証を目指し、1ステップDWBAを用いた、(p,t)を(t,p)反応断面積の計算を開始した、Sn同位体についての試験的な計算結果を得た。基底状態におけるダイニュートロン相関については、クーパー対波動関数の近接部分に着目した分析を行った。単一軌道対との相違が顕著に表れること、また、対近接確率という指標を考案した。2.元素合成反応断面積の高精細記述を目指した連続状態QRPA計算コードの改善については、クーロン波による正確な外向き波境界条件を課す改善を実施した。陽子過剰Ne17同位体の双極子応答を対象にこの改善効果の検証を行った。副産物として、この原子核におけるソフト双極応答が対相互作用に敏感であることを発見した。3.スキルム型Hartree-Fock-Bogoliubov理論を用いて、超流動変形原子核による中性子散乱のt行列と位相差の定式化を行った。第一段階として、球形原子核の場合の定式化を完成させた。準粒子共鳴が断面積のピークとして現れること、準粒子共鳴の対ポテンシャル依存性を分析した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究課題1の対振動モードと2中性子移行については、予定異常の多くの数値分析を実行することができ、先行部分については論文発表することができた。巨大対振動、Ca,Niでの対振動についても国際会議で発表できる段階まで成果は得られ、論文執筆の一歩手前の段階に到達している。その他の2項目については、当初掲げた研究計画に着手できている。全体としておおむね順調であると判断している。
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Strategy for Future Research Activity |
1.対振動モードの研究については、QRPA振幅の微視的成分の分析を行う。また、2中性子移行反応断面積という観測量との関係を明らかにするためすでに着手した1ステップDWBA計算を系統的に遂行する。特に、2中性子移行断面積と対移行遷移密度の異常テールとの関係を明らかにする。2.元素合成反応断面積の高精細記述については、前年度に作成した改善コードを用い、どのような条件下でエネルギー分解能10keVをもつ高精細記述が可能となるか数値計算上の検証を行う。平行して、MPI並列プログラミングによる数値計算コードの改善を行い、系統的計算に向けての基盤を整備する。3.Hartree-Fock-Bogoliubovグリーン関数を用いた中性子弾性散乱の記述を行い、準粒子共鳴と弾性散乱断面積の関係を解明する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
1.年度末に実施予定の研究打ち合わせのための旅費として用意していたが、その打ち合わせの日程が次年度の冒頭に移動したため、その旅費に相当する予算を次年度に回した。打ち合わせは4月に実施する予定である。
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Research Products
(7 results)