2012 Fiscal Year Research-status Report
原子核密度汎関数理論で解明する弱束縛中性子の集団ダイナミックス
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23540294
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
松尾 正之 新潟大学, 自然科学系, 教授 (70212214)
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Keywords | 中性子過剰原子核 / 対相関 / 二中性子移行 / 双極子励起 / 準粒子共鳴 |
Research Abstract |
1.スキルム型密度汎関数模型を用いたHartree-Fock-Bogoliubov理論と連続状態QRPA理論を用い、Sn,Ca,およびNi同位体における異常対振動モードと基底状態対移行モードをさらに詳しく分析した。これらのモードの微視的構造を解明することを目的に、RPA振幅や対遷移密度を2準粒子励起の各成分に分解した。数個の主要成分は全体の約半分を構成するにすぎず微小な成分まで必要であること、この後者は高い軌道各運動量を持つ準粒子軌道がコヒーレントに寄与するものであること、したがってこのモードがダイニュートロン相関を有していることを示唆していることを見出した。 2.元素合成反応断面積の高精細記述を目指した連続状態QRPA理論の開発については、強度関数を2準粒子励起の成分に分解することを可能にする定式化を見出した。この定式化により、1粒子放出や2粒子放出を分離することが可能になった。これにより、双極子励起の強度関数から直接中性子捕獲反応を求める手法が完成に近づいた。さらに、エネルギー分解能を1eV程度にまで高める手法も見出すことができた。 3.超流動原子核における中性子散乱の分析を、球形を仮定して取り扱いを簡単にしたうえで行った。特に弱束縛2p軌道が対相関によって非束縛の準粒子共鳴として出現する機構に着目し、共鳴幅や共鳴エネルギーに対する対相関効果を詳細に分析した。対相関が共鳴幅を狭める効果があることをこの分析から見出した。また、巨大ハロー核におけるテールの分析を開始することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究課題1については、微視的成分の分析からダイニュートロン相関を示すというモードの特質についての新たな知見が得られたことは大きな進歩であった。研究課題2についても、1粒子放出成分の分離と高分解能化の手法を発見し定式化に成功したことは大きな進歩であった。研究課題3については、当面、形状変形を取り入れないことにした点、また関連して変形QRPAの定式化の見通しが立たなくなってきたことは当初目標からみると後退ではあったが、この簡単化により、準粒子共鳴の分析は大きく進んだ。また、巨大ハロー核のテールの分析が新たに進展した。したがって、全体として、おおむね順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
1.対振動モードの研究については、これまでの成果を論文としてまとめ発表する。また、1ステップDWBA計算と組み合わせて対移行反応断面積への影響を定量化する。 2.元素合成反応断面積については、前年度に見出した手法において解決すべき課題、すわなち、計算空間を拡大することに取り組み、そこまでの成果を論文として発表する。 3.中性子準粒子共鳴の性質に関する分析をさらに進め、これまでの成果を論文としてまとめ発表する。巨大ハロー核のテールについては、前年度の予備的分析から中性子対相関の優勢という特徴が見えており、この点を確実にする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究打ち合わせのための旅費として使用予定であったが機会を逃したため、未使用額を生じた。来年度に相当額を使用予定である。
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Research Products
(14 results)