2013 Fiscal Year Annual Research Report
数値シミュレーションによる高温高密度QCDの相構造の研究
Project/Area Number |
23540295
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
江尻 信司 新潟大学, 自然科学系, 准教授 (10401176)
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Keywords | 素粒子論 / 計算物理 |
Research Abstract |
計算機シミュレーションを行うことにより、高温高密度での量子色力学(QCD)の相構造を研究した。密度を調節する化学ポテンシャルがゼロでない場合、直接モンテカルロシミュレーションができないため、高密度領域でのQCDの研究は困難である。そこで、パラメータ空間を広げ、温度と化学ポテンシャルだけではなくクォークの質量も変数として加えて相構造を考えた。低密度領域からの外挿で計算が難しい高密度領域の相構造を予想することが可能であることに加え、質量依存性を調べてスピン模型などと比較すれば、相転移のユニバーサリティークラスを議論することができる。 本研究では、確率分布関数に着目して相転移の性質を調べる方法を提案した。その方法を用いて、まず、すべてのクォークが重い領域での相構造を調べ、一次相転移とクロスオーバーの領域を分ける臨界面を任意の密度で具体的に決定することに成功した。それにより我々の方法の有用性を示すことができた。続いて、現実のクォーク質量での相構造の解明を目指した動的クォークが軽い場合の計算を行い、現象論的な研究で予想されるような、低密度でのクロスオーバーが高密度で一次相転移に変わる兆候を確認することができた。さらに、低密領域で、カイラル相転移点近傍のスケーリング則をスピン模型と比較して議論した。 また、現実のQCD相転移は、軽いクォーク2種類と少し重いクォーク1種類の系であるが、それを少し変更した重いクォークの種類が多数ある系では、一次相転移が現れる臨界点を有限密度の場合も含めて容易に調べられることが分かった。その研究では、クォーク多種類の系から出発して現実の系に近付けるアプローチの有効性を指摘したことにとどまらず、その系は電弱相互作用の複合ヒッグス模型の一例と同等で、その相転移の調査は電弱相転移でバリオン数生成が可能かどうかの議論と関連して、興味深い研究対象であることが分かった。
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Research Products
(16 results)