2013 Fiscal Year Research-status Report
拡張された重力理論に基づく宇宙の歴史を再現する模型の構築
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23540296
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
野尻 伸一 名古屋大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (00432229)
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Keywords | 暗黒エネルギー / F(R) 重力 / 2階対称テンソル場の理論 |
Research Abstract |
インフレーションと暗黒エネルギーによる加速膨張を統一的に扱うことのできる現実的な模型の構築を目指し、アインシュタイン重力を拡張した F(R) 重力理論、時空の捩率 T を使った理論を拡張した F(T) 重力理論、2階対称テンソル場が重力と結合した理論等の研究を行なった。これらの成果は論文にまとめられるとともに、国際会議等で発表している。 最近の観測により、暗黒エネルギーの状態方程式パラメーターが -1 より小さいことが示唆されているが、このような状態方程式をスカラー場の理論で実現しようとすると量子力学の原理と矛盾するが、F(R) 重力理論のような修正重力理論等でこの問題を回避できることを示した。また、宇宙初期に作られたブラックホールが F(R) 重力理論では「反蒸発」という現象によって生き残る可能性があることを示した。 F(T) 重力理論では、高次元理論との関係や、F(R) 重力と異なり、余分な伝搬モードが現れず、観測との整合性がよりたやすく満たされることを示した。 また、最近になり、質量を持つ2階対称テンソル場やこの場が重力と結合した理論の研究に目覚ましい進歩があった。2階対称テンソル場の時間成分や跡成分が期待値を持っても空間の回転不変性を破らないために矛盾なく加速膨張を引き起こすことが出来る。そこで、このような模型を F(R) 重力の形に拡張し、実際にインフレーションや加速膨張を実現する模型が作れることを示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
この研究の目的は主に次の3つである: 1. 宇宙初期のインフレーション、約50 億年前から始まった宇宙の加速膨張や暗黒物質を説明する模型が存在するかを系統的に調べるとともに、顕にそのような模型の構築を行う。2. そのような模型が、現在の宇宙の大規模構造をもたらす物質の揺らぎの成長等を様々な観測や実験と矛盾がなく説明できるか確かめるとともに、これらの模型のするとともに、系統的に調べるとともに、実験・観測による検証の可能性を検討する。3. 超弦理論に基づく重力理論的立場と、より現象論的な素粒子論の立場の両方から、模型の考察を行い、宇宙論から素粒子論へ明確なフィードバックを与える。 1. については F(R) 重力理論に加え、F(T) 重力理論や質量を持つ2階対称テンソル場が重力と結合した理論で十分現実的な模型を構築できることを示した。2. 質量を持つ2階対称テンソル場が重力と結合した理論で密度ゆらぎの計算を始める準備を始めている。この理論ではテンソル場を含むために揺らぎの構造がスカラー理論とは異なるはずであり、観測により将来検証する可能性を調べている。3. 2階反対称テンソル場は、超弦理論では自然に現れる。この模型を加速膨張の模型と考えたときにどのような制限が付くか、また、超弦理論からどのような予言が出来るかを調べている。 以上のように目的の2割程度は達成され残りの内2割程度も達成のめどがついている。
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Strategy for Future Research Activity |
近年急速に研究が進んだ2階対称テンソル場やこの場が重力と結合した理論の研究を進め、インフレーション、暗黒エネルギー、及び暗黒物質の問題を統一的に解決する模型を構築できるかを調べる。特に2階対称テンソル場に対応する粒子が、暗黒物質になる可能性を調べる。また、この理論ではテンソル場を含むために揺らぎの構造がスカラー理論とは異なるはずである。特に最近 BICEP2 の実験で観測されたテンソル揺らぎがもし本当に存在すれば、その揺らぎに影響を与えるはずである。そこで、この揺らぎの特徴を明らかにし、観測により将来検証する可能性を調べる。 また、2階反対称テンソル場は、超弦理論では自然に現れるため、2階反対称テンソル場が重力と相互作用する理論を加速膨張の模型とみなしたときにmどのような制限が観測や実験から付くかを明らかにするとともに、超弦理論からどのような予言が出来るかを調べる。 研究費は主に、共同研究者のいる外国の研究グループを訪れるとともに、国内外から研究者を招き、情報の提供をお願いするとともに、議論を行うために使用する。
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Research Products
(18 results)