2013 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23540297
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
南部 保貞 名古屋大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (40212112)
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Keywords | 量子ゆらぎとエンタングルメント / 古典化 / 量子マスター方程式 |
Research Abstract |
量子場の持つ量子相関の振舞いを場と相互作用する2つの検出器の理論モデルを用いて解析した. 量子論固有の性質であるエンタン グ ルメントの有無は,このモデルにおいては2つの検出器の状態に対するnegativityとよばれる物理量を用いて判定される. 本年度は検出器の状態の時間発展を把握することを目的として,検出器系に対する量子マスター方程式の導出を試みた.この手法は量子光学の分野でよく用いられているが,通常は回転波近似とよばれるバーチャルな過程を無視する取り扱いがおこなわれる.しかしながら,この近似は真空状態のゆらぎに関与する効果を無視することに対応し,量子場の真空状態由来のエンタングルメントを引き出すことはできない.そこで,本年度は回転波近似なしのマスター方程式を導出し,その解の構造について解析を行なった.時間方向に対して適当なtime scale scaleの粗視化(平均操作)を行なうことで,得られるマスター方程式は状態に対する正値性を保つLindblad型となる.粗視化のtime scaleは検出器のスイッチがonとなっている時間間隔に対応する.初期時刻近傍ではエンタングルメントの振舞いが,これまで行なってきた摂動計算の結果と一致することを確認した.一方,長時間経過したのちではエンタングルメントの振舞いは,摂動計算の結果からずれてた定常的状態に移行することを見いだした. その物理的意味や解釈については現在考察中であるが,量子場固有のエンタングルメントに関する情報を,長時間経過したのちの状態から抽出可能であることを示唆している.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
現時点に置ける解析はもっぱら背景時空が与えられた場合のテスト場に対する量子相関の解析にとどまっており, 重力が関与する場合の量子相関を議論するには至っていない.
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度においては,量子場と結合する古典的自由度(ダスト)の系を考え,量子場のエンタングルメントと重力的不安定性の関係を調べる.このモデルの解析を行なうことで,量子相関の消失と古典的密度ゆらぎ生成との直接的関係を見いだすことが可能となる.
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