2013 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23540299
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
前川 展祐 名古屋大学, 基礎理論研究センター, 准教授 (40273429)
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Keywords | 陽子崩壊 / 大統一理論 / 統一群 / 超対称性 / 真空選択 / パラメータ共鳴 |
Research Abstract |
対称性で許されるすべての項をO(1)係数で導入するという自然な仮定の下で大統一理論における最も深刻な問題である二重項-三重項分離の問題を解くことができる自然な大統一理論には次元6演算子による核子崩壊が起こりやすくなるという重要な予言がある。自然な大統一理論における核子崩壊の様々な崩壊モードを計算した。幾つかの崩壊モードに注目することで、統一群がSU(5)であるかSO(10)であるかE6であるか、見分けることができうることを示した。その際に、現実的なクォーク、レプトンの質量や混合角を導出するという条件を課しつつさらに存在するO(1)係数の任意性が予言に与える影響も加味した。 また、自然なE6大統一理論に世代対称性SU(2)とCP対称性を導入した理論では、超対称性フレーバー問題や超対称性CP問題を解くという良い性質がある。その模型においてはO(1)係数の数が少なく、上記の任意性が小さいため、予言値の振れ幅が小さくなることという予想を実際に計算することで確かめた。 宇宙の発展の歴史において、真空が変化することによる粒子生成が真空選択に強い影響を与えることが知られているが、粒子生成のための相互作用が繰り込み可能な場合にのみ、計算されていた。非繰り込み項による粒子生成でも真空選択に大きな役割を果たしうることを実際に解析的な計算と数値計算を組み合わせることで示した。また、この真空選択の応用として、自然な大統一理論に存在する現象論的に興味の無い無数の真空よりも、現象論的に意味のある真空が宇宙の歴史の中では選択されやすいことを指摘した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
自然な大統一理論において問題となっていた無数の真空の問題が宇宙史を考えることで解決できたことは、大きな進展と言える。一方でバリオン数やインフレーションについては、研究は進んではいるがまだ私が興味がある大統一理論に完全に埋め込めたとは言い難い。特に昨年度末に報告されたインフレーション起源の重力波モードは、研究していたインフレーションに強い制限を与えている。
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Strategy for Future Research Activity |
自然なE6大統一理論においてレプトン生成が可能になる条件を求める。 また、昨年度末に報告されたインフレーション起源の重力波モードは、インフレーションスケールが大統一スケールになることを示唆しており、自然な大統一理論においてインフレーションを考える強い動機を与える一方、自然な大統一理論ではカットオフスケールが大統一スケールになるため、重力波モードが示唆する大きな場のインフレーションを実現する上で困難を与えている。どのような可能性が有り得るのか考えるつもりである。 一方で、インフレーションスケールが大きいことは、非繰り込み相互作用による粒子生成の効果がインフレーション後の再加熱時に与える影響も大きいことを示唆しており、その研究も遂行するつもりである。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
旅費が計画よりも少なかったため。 最終年度であることもあり、その研究成果の発表のための旅費として用いる。 共同研究者の発表旅費にも使用する。 現在使っているコンピュータも4年目なので、その更新を行う。
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