2012 Fiscal Year Research-status Report
計算機シミュレーションによるゲージ理論の研究とその量子多体現象への応用
Project/Area Number |
23540301
|
Research Institution | Nagoya Institute of Technology |
Principal Investigator |
一瀬 郁夫 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (20159841)
|
Keywords | ゲージ理論 / 量子相転移 / 計算機シミュレーション / 光学格子 / 極低温原子系 |
Research Abstract |
24年度は主に極低温ボソン原子系に関する研究を行った。またそれと並行してミクロスケールで起こる超伝導現象、特に金属・半導体複合クラスターにおける超伝導現象の研究も行った。 極低温原子系については特に2成分ボソン原子系において同種間斥力、および異種間斥力が強い場合について、計算機実験による数値シミュレーションと解析的手法としての有効場の量子論を用いて研究を行った。これらの有効理論としてボソンt-J モデルを導いた。このモデルは強相関電子系、特に高温超伝導現象を記述するフェルミオンt-J モデルと密接に関連していることは言うまでもなく、重要なモデルであると言える。 まず3次元立方格子上の2成分ボソン原子系を考え、計算機シミュレーションによりその相構造を明らかにした。原子のホッピング効果が小さいときには系は2成分を擬スピンと見なしたときの強磁性、反強磁性秩序をもつ相が出現し、それらの相境界が特別なものであることを明らかにした。ホッピング効果を大きくしていくと、系は超流動状態に移行し、パラメータの大きさにより、超流動状態と磁性秩序状態が相分離して共存する可能性を見出した。 次に同様のモデルを三角格子上で考え、数値実験により詳しく解析を行うと、非常に多くの相が存在することが分かった。その中で特に固体の空間秩序と超流動が共存する超固体状態が出現することが明らかとなった。この数値シミュレーション結果は、有効場理論による解析においても確認された。 上記の問題と密接に関連している有限系でのヘテロクラスターとしてSn/Siコアシェルクラスタでの2種類の超伝導現象出現を確認し、理論的解析を行った。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的は、これまでに蓄積されてきた場の量子論の知識や格子上の場の量子論を非摂動的に調べる計算機実験、数値シミュレーションの手法を用いて、量子多体現象に関する物理、特に相構造、相転移現象、低エネルギー励起の構造等を調べ、新奇の量子現象を予言することにある。平成24年度までに主に極低温原子系をその研究テーマの中心に置き、上記の研究を行ってきた。近年のレーザー技術、低温技術の進歩により、光学格子上の極低温原子系が実現され、更に種々のパラメーター、ホッピングの強度、原子間相互作用、格子の形状や次元が自由にコントロールできるようになった。更に今後、各光学格子上のサイトに置く原子の個数も自在にコントロールできる時代が来ると思われる。 上記のような実験的状況において、理論的研究が重要となっていることは明らかである。本研究の目的は正にこのような状況に符合するものであり、用いた研究手法の正当性や適用範囲の広さを勘案すれば、順調に進展していると言える。得られた結果は物理的に重要であり、多くの学術論文に発表され、また日本物理学会における多くの講演では聴衆の興味を引いたと言える。
|
Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究をさらに発展させるべく、数値計算で得られた結果を解析的に理解することを目標として、有効場の理論構築を行う。また、計算機シミュレーションを行うだけでなく、対応するGinzburg-Landau 方程式を導き、これを数値的に解くことにより、計算機実験で得られた結果をより深く理解する。 極低温原子系の相構造の研究、相転移現象の研究を今まで以上に進めるとともに、それぞれの相における位相励起、soliton や vortex などの力学を上記の手法により明らかとする。 更にボソン系だけでなくフェルミオン系の数値実験を行うことも計画している。これには格子ゲージ理論の数値計算技術は有用と思われる。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
主に研究打ち合わせの旅費や研究会、学会での成果発表のため研究費を使う。 ゲージ理論に関する並列計算の手法の開拓のための専門的知識の供給のため使用。
|