2011 Fiscal Year Research-status Report
くりこみ群による相対論的非平衡系のホログラフィーの解明と量子重力理論の構築の研究
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23540304
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
福間 将文 京都大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (10252529)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2016-03-31
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Keywords | 量子重力理論 / 非平衡熱力学 / エントロピー / 粘弾性体 / 局所熱平衡 / ホログラフィー原理 |
Research Abstract |
相対論的非平衡熱力学はこれまで、通常の独立な状態変数に加えてカレントも熱力学変数とみなす「拡張された熱力学」に基づいていた。しかしこの形式では、実際に非平衡系がどのようにエントロピー最大の熱平衡状態に近づいていくのかが見えにくい。 この研究では、エネルギー枠 (Landau-Lifshitz 枠)の線形非平衡熱力学において、微分展開の最低次で非平衡状態のエントロピーを定量的に記述する局所的な「エントロピー汎関数」を導入し、それにOnsagerの線形非平衡理論を適用することにより、本来の状態変数だけで非平衡熱力学が構成できることを示した。 我々はさらに上記の手法を用いて相対論的粘弾性体の理論を構成し、それが(1)パラメーターの任意の値に対して長時間極限でNavier-Stokes理論を与えること、(2)あるパラメーター領域では因果律を保ったsymmetric hyperbolicな方程式が得られること、を示した。これにより、因果律が破綻するという問題を抱えていた相対論的流体力学に対し、流体を粘弾性体の長時間極限とみなすことで、因果律を保った相対論的流体力学が定義できることを示した。また、(3) 本来は空間的変形を表す歪みテンソルを相対論的に拡張したとき、Tolmanの法則を通じて、弾性的膨張と熱膨張が統一した形で記述できることも指摘した。 近年、重イオン散乱実験の解析や重力/流体対応の研究において共形不変で高階微分の補正の入った流体力学模型がいくつか提案されているが、それらはいずれも局所熱平衡仮説を破っている。我々は、共形不変で高階微分の補正の入った粘弾性体理論を構築し、それの長時間極限として共形流体を定義することにより、局所熱平衡を保ったまま共形流体が記述できることを示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
非平衡熱力学を局所熱平衡仮説を保ちながら一般座標不変に再定式化することに成功し、重力の自由度も含めた熱力学の構築の準備が整った。これにより、本研究の目的であった重力が持つエントロピーの起源、さらには量子重力の持つ基本的力学変数の正体の解明が大きく進むことが期待される。
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Strategy for Future Research Activity |
重力の自由度も含めた熱力学の構築を行う。とくに、局所熱平衡仮説を第一原理として設定することで、量子重力理論の基本的な力学的自由度の正体を解明する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
構築した理論の数値的計算による確認のため、計算機環境の整備と、海外での研究発表のための旅費などに研究費を使用する予定である。
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Research Products
(5 results)