2013 Fiscal Year Research-status Report
量子色力学の非摂動的性質とクォーク・グルーオン多体系のダイナミクス
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23540306
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
菅沼 秀夫 京都大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (10291452)
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Keywords | 量子色力学 (QCD) / クォーク / グルーオン / カラーの閉じ込め / カイラル対称性 / 格子ゲージ理論 / ハドロン / クォーク・グルーオン・プラズマ (QGP) |
Research Abstract |
強い相互作用の基礎理論である量子色力学(QCD)に基づいて、閉じ込めとカイラル対称性の自発的破れの対応関係の解明など重要で独自性の高い研究を行った。 ①閉じ込めの秩序パラメータであるポリヤコフ・ループとカイラル対称性の自発的破れと直接関連するディラック演算子の固有モードとの関係を世界で初めて解析的に導出した。これによってカイラル対称性の自発的破れの本質的な要素である低ディラック・モードの寄与が閉じ込め現象に対しては小さいことを解析的に示し、QCDにおいて「カイラル対称性の自発的破れ」と「クォークの閉じ込め」とが1対1には対応しない事を示した。 ②ディラック演算子の固有モードに着目し、ゲージ不変性を保ったまま、カイラル対称性の破れと閉じ込めの関係を調べる格子QCDでの新たな方法を開発し、ディラック・モードと閉じ込めポテンシャル、ポリヤコフ・ループ、センター対称性との関係を調べ、カイラル対称性の自発的破れの本質的な要素を取り除いても、閉じ込め力が残ることを格子QCD計算を用いて示した。 ③カラーSU(3) QCDの場合について、最大可換(MA) ゲージでのグルーオン伝搬関数の格子QCD計算を世界で初めて行った。クォーク閉じ込めは しばしば双対超伝導描像で説明されるが、その際に理論のアーベル化とモノポール凝縮が重要な鍵となる。我々はSU(3)の場合のMAゲージでのグルーオンの伝搬関数を計算し、非対角グルーオンが 1GeV程度の大きな有効質量を有すため長距離の物理には寄与せず、低エネルギー領域で系がアーベル化する事を示した。 ④シュウィンガー・ダイソン(SD)方程式を用いて、クォークのテンソル荷の非摂動的解析計算を行い、あわせて核子の電気双極子モーメントへの非摂動的な寄与などを評価した。また、SD方程式を用いて、クォークのスカラー荷、軸性ベクトル荷、擬スカラー荷の非摂動的解析計算を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究課題では、クォーク・グルーオンという極微の階層から強い相互作用やハドロンの諸性質を理解することを目的とし、量子色力学の非摂動的性質に関連する様々な研究テーマを同時に複数進めている。それら各々のテーマについて、強い相互作用の基礎理論であ る量子色力学に基づいた解析的な定式化も、大型計算機による大規模数値計算も当初の計画以上に進んでおり、着実に多くの研究成果を得ている。 特に、理論物理学の最重要未解決課題の1つである、量子色力学における閉じ込めとカイラル対称性の自発的破れに関する解析的な対応関係を導出したことは大きな成果である。 これらの研究成果は、今年度だけで既に12編の学術論文にまとめられ、そのうち3編は国際的な一流査読誌 Physical Review D誌(アメリカ物理学会発行)に掲載または受理された。また、海外の国際会議において招待講演を行うなど世界的にも研究課題の成果が注目されている。 この様に、研究の予想以上に順調な展開、研究成果の多さ、国内外での高い注目度から、本研究課題は当初の計画以上に進展していると判断できる。
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Strategy for Future Research Activity |
基本的には今後も従来の方向で研究を進めていく。つまり、強い相互作用の基礎理論である量子色力学(QCD)に基づいて、クォーク・グルーオンのレベルから強い相互作用の基本的性質やハドロンの諸性質を研究していく。研究方法としては、解析的な理論計算に基づ いて定式化を進め、強い相互作用の第一原理計算である格子QCD計算によって定量的に分析を行い、QCDに基づいた非摂動物理やハドロン物理を総合的に理解していく。 特に、閉じ込めとカイラル対称性の自発的破れに関する解析的な対応関係を導出したことは大きな成果であり、これに基づいて更なる本質的な研究が可能になると思われる。 格子QCD理論のモンテカルロ計算に関しては、引き続き大阪大学のスーパー・コンピュータなどを用いて、大規模数値計算を実行していく。 また、原子核理論と素粒子論という分野の垣根を越えた国際的な連携を押し進め、方向性の近い研究グループとの共同研究により、効率良く研究を進めることを考えている。
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Research Products
(19 results)