2013 Fiscal Year Annual Research Report
第一原理計算による有限温度量子色力学物性と相対論的流体力学
Project/Area Number |
23540307
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
浅川 正之 大阪大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (50283453)
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Keywords | 量子色力学 / 高エネルギー原子核衝突 / 理論核物理 / 素粒子論 / クォークグルーオンプラズマ / 相対論的流体力学 / 保存量揺らぎ |
Research Abstract |
線形応答の一般論からずれ方向の応力の緩和時間とずれ粘性の比をユークリッド時空における格子ゲージ計算から求める定式化を行った。この定式化においては、演算子積展開から温度に依存する接触項と温度に依存しない接触項の二種類の接触項が現れ、これらを更に解析接続する必要があったが、この問題に対する適切な対処法を見出すことができた。その上でSU(3)グルーオンプラズマ(クエンチ計算であるため)に対して格子ゲージ計算を行い、因果律を満たすセカンドオーダーの相対論的流体力学計算で必要なこの値を初めて第一原理から求めることができた。 QCDの相構造を理解するために現在広く観測さている陽子数揺らぎは、ハドロン相においてデルタ共鳴を介した相互作用のために大きく変更を受けること示した。その上で、終状態における陽子数揺らぎが数学的に扱いやすい形を取ることを示し、それによって実験的に観測できない中性子数揺らぎの情報を補うことが出来、終状態の情報から始状態におけるバリオン数揺らぎの情報を復元できることを示した。2次、3次、4次のキュムラントについて具体的な公式を与えた。 また、LHCにおいて観測されている、保存量である電荷揺らぎと荷電粒子数の比の値の観測を行うラピディティー幅依存性と、その物理量に対する全系における電荷保存の影響を、有限系であるということを境界条件によって考慮に入れた拡散マスター方程式を用いて議論した。その結果、LHCで観測されている上記の量のラピディティー幅依存性には有限体積効果はほとんど効かないこと、この依存性はハドロン化以前の状態における保存量揺らぎの情報をラピディティー幅を大きくすることによってより多くとらえることになるという効果に起因することが判明した。従って、高エネルギー原子核衝突の終状態は大域的には熱平衡にあるとは言えないことを示した。
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Research Products
(8 results)