2013 Fiscal Year Annual Research Report
K中間子凝縮ーハイペロン共存に基づく新しい高密度核物質相の探究
Project/Area Number |
23540318
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Research Institution | Chiba Institute of Technology |
Principal Investigator |
武藤 巧 千葉工業大学, 情報科学部, 教授 (60212247)
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Keywords | 高密度核物質 / K中間子凝縮 / ハイペロン / K中間子-バリオン相互作用 / 状態方程式 |
Research Abstract |
中性子星内部のような高密度物質中で存在が期待されるマルチ-ストレンジネス相として,K凝縮とハイペロン(Y)の共存相 [(Y+K)相と略記]の可能性を検討し,中性子星の構造や冷却等,観測との関連で議論した。中性子星内部での(Y+K)相の存在は,高密度物質の状態方程式(EOS)を非常に柔らかくし, 最近の太陽質量の2倍に及ぶ重い中性子星の観測結果と相容れないため, こうした観測からの EOS の制限との整合性を検討する必要がある。 本研究では,有限核に複数個のK-中間子が束縛された特異な原子核の構造に関する理論的研究で用いたのと同じ相対論的相互作用模型を用い,有限系から中性子星内部の無限系までを統一的に扱う枠組みによって,中性子星物質中での(Y+K)相の発現密度とEOS を得, 系の特徴を明らかにした。結果は以下のようにまとめられる。 (i) (Y+K)相の発現密度は, K-核子(N)相互作用の引力の大きさに依存する。KN相互作用が標準的な大きさの場合, K凝縮はハイペロン物質中から標準核物質密度の4倍程度のバリオン密度で発現する。 (ii) (Y+K)相中では, Y 混在とK凝縮の両方によるエネルギー利得の効果で, 系のEOS の軟化が顕著になる。また以前, バリオンに対する非相対論の枠組で示されたように, 密度異性体としての準安定状態が現れ, 重力に依らない自己束縛した状態の存在が示唆される。しかしこのEOS では, 特に高密度領域での硬さが足りず, 観測にかかっているような重い中性子星を得ることができない。 高密度領域で著しいEOS の軟化を抑制し,中性子星の質量観測と矛盾しない結果を得るために必要な諸効果についても検討した。
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