2012 Fiscal Year Research-status Report
共形場理論による非自明な背景上の超弦理論の解析とその素粒子模型への応用
Project/Area Number |
23540322
|
Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
菅原 祐二 立命館大学, 理工学部, 教授 (70291333)
|
Keywords | 超弦理論 / 共形場理論 / 素粒子論 / 数理物理学 |
Research Abstract |
本研究課題における主要なテーマは,非コンパクトあるいは特異性を持った非自明な背景上の超弦理論の物理的・数理的性質を解明すること,及び, この問題に深く関係し多くの未解決問題を有する非有理共形場理論の詳細な研究を行うことである。24年度は,そうした非コンパクトなターゲット空間の代表例であるnon-extremal NS5ブレーン背景上の超弦理論のトーラス分配関数を詳細に解析した。 特にブラックホールのホーキング温度の値に関わらず「有効的なハゲドーン的不安定性」という興味深い現象が見られることを明らかにした。更に,昨年に引き続き,非コンパクトな超共形場理論において超共形代数の指標の「modular completion」に関する研究を行い,以下のような新たな興味深い知見を得た: 1 modular completionの特定の組み合わせが、N=2ミニマル模型の指標と類似した性質を持つことを明らかにし、「非幾何学的オービフォルド」としての解釈を議論した。 2 一般的なmodular completionについてより単純な代数的構造を発見した。 1の成果については既に学会等で報告しており,25年度のできるだけ早い時期に論文発表を行う予定である。2については現在進行中の研究の一部であるが,本研究課題においてbreak throughともなり得る研究成果であると自負しており,25年度により発展させたいと考えている。特に,これまで未解決であった,modular completionに基づく非コンパクトな背景を記述するゲプナー模型の代数構造を明らかにしたいと考えている。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題における主要なテーマは,非自明な背景な超弦理論の物理的・数理的性質を世界面上の共形場理論の見地から解明することである。当該年度は,「研究実績の概要」で述べたように,non-extremal NS5背景上の超弦理論についての論文発表とともに,非コンパクトな超共形場理論において興味深い知見を得た。とりわけ超共形代数の指標の「modular completion」の代数的構造に関し,break throughとなり得る発見をしたため,今後は,より非自明な背景の超弦理論や,mock modular form等の数学的及び数理物理学における応用も視野に入れた展開が期待できるようになった。 物理的な応用や,本研究計画のもう一つの柱である「非幾何学的背景上の弦理論」については今後の課題であるが,modular completionについての上記の進展は当初の計画以上の進展であると言え,研究計画全体としては概ね順調であると考えている。
|
Strategy for Future Research Activity |
今年度得られた非有理超共形場理論における「modular completion」についての研究成果をもとに,ゲプナー構成等の超弦理論のコンパクト化や,modular completionに基づく非正則ヤコビ型式の代数構造の詳細な研究を行う。更に今後は物理的な応用を視野に入れ,研究を推し進める予定である。具体的には,超弦理論のコンパクト化や,D-ブレーンを記述する境界共形場理論に対する非正則モジュラー形式の応用について研究を行いたい。 また,非幾何学的背景上の超弦理論として,T-双対変換によるtwistingに基づいて構成される非幾何学的背景である「T-フォールド」についての研究は端緒についたばかりである。「界面共形場理論」(interface CFT)との関連にも着眼して研究を遂行し,25年度には一定の研究成果をあげたいと考えている。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本研究計画において十分な成果をあげるため,超弦理論に関する国際会議及び国内会議に出席を予定しており,その旅費・滞在費として使用するとともに,国内の共同研究者との研究打ち合わせのための旅費に使用する。(総額40万円程度) 老朽化が進む個人使用の計算機やプリンターなどの周辺機器を適宜購入し,研究活動に必要なソフトウェアのアップデートを行う。(総額30万円程度) なお,平成24年度には同目的の計算機関係の支出が予定より少額で済んだため,未使用額(約12万円)が生じた。これは「次年度使用額」として上記の「30万円」の中に含める予定である。 更に,素粒子物理学や研究に深く関わる数学関連図書の購入を行う。(年10-15冊程度,総額10万円程度)
|
Research Products
(3 results)