2013 Fiscal Year Research-status Report
共形場理論による非自明な背景上の超弦理論の解析とその素粒子模型への応用
Project/Area Number |
23540322
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
菅原 祐二 立命館大学, 理工学部, 教授 (70291333)
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Keywords | 共形場理論 / 超弦理論 / mock modular form / 数理物理学 / 素粒子物理学 |
Research Abstract |
2次元の共形場理論ではコンパクトなターゲット空間を持つ非線形シグマ模型は既に詳しく研究されているが,非コンパクトでかつ非自明なターゲット空間を持つ理論については未解決問題も多く,超弦理論の背景場としても重要である。本研究課題における主要なテーマは,こうした非コンパクトあるいは特異性を持った非自明な背景上の超弦理論の物理的・数理的性質を解明すること,更に深く関連する非有理共形場理論の詳細な研究を行うことである。 平成25年度は,非コンパクトな超共形場理論において超共形代数の指標の「modular completion」に関する研究を行い,有理共形場理論のある種の解析接続との関係を詳細に調べ,論文発表を行った。更に上記のmodular completionがEisenstein級数の非正則な拡張と解釈できるなどの新たな知見を得た。この研究成果は,複雑な関数形でのみ知られていたmodular completionの表式を,よりシンプルでかつmodular変換性やspectral flowの性質が明らかな形に表わすという数学的な有用性を持つと同時に,それが物理的には経路積分より自然に得られるという事実を示した点で大変意義深いと自負している。26年度のできるだけ早い時期に論文発表を行いたいと考えている。更にこの成果を,ゲプナー構成などを通して非コンパクトカラビ・ヤウ空間上の超弦理論に応用する研究についても一定の成果を得た。 一方で,今年度新たに筑波大の佐藤氏との共同研究を行い,T-双対変換によるtwistingに基づいて構成される代表的な非幾何学的背景である「T-フォールド」上の弦理論について,「非対称オービフォルド」や「interface CFT」に基づく研究を行い,一定の成果を得た。この研究は現在進行中のものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題における主要なテーマは,非自明な背景な超弦理論の物理的・数理的性質を世界面上の共形場理論の見地から解明することである。25年度は「研究実績の概要」で述べたように,modular completionと有理共形場理論の新たな興味深い関係についての論文発表を行った。更に経路積分に基づき,modular completionのよりsimpleで自然な表式を発見し,幾つかの学会発表を行うことができた。これらの成果により,非自明な背景の超弦理論や,mock modular form等の数学的及び数理物理学における応用も視野に入れた展開が期待できるようになった。 本研究計画のもう一つの柱である「非幾何学的背景上の弦理論」についても,「T-フォールド」について「界面共形場理論」(interface CFT)との関連に着眼して研究を行い,一定の成果を得た。 25年度の研究成果の多くは未だ論文の形で発表しておらず,26年度に持ち越された点が課題として残っているものの,研究計画全体の推移としては概ね順調であると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度得られた非有理超共形場理論におけるmodular completionについての研究成果をもとに,ゲプナー構成等の超弦理論のコンパクト化や,modular completionに基づく非正則ヤコビ型式の代数構造の詳細な研究を行う。更に今後は物理的な応用を視野に入れ,研究を推し進める予定である。具体的には,超弦理論のコンパクト化や,D-ブレーンを記述する境界共形場理論に対する非正則モジュラー形式の応用について研究を行いたい。 また,非幾何学的背景上の超弦理論として「T-フォールド」についての研究は端緒についたばかりである。まずは,25年度に得られた研究成果をできるだけ早い時期に論文発表を行い,更により現実的な超弦理論のコンパクト化への応用や,その低エネルギー有効理論にどのような物理的な知見が得られるか等の研究を行いたいと考えている。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
25年度はほぼ計画通りの額の研究費を使用したが,24年度に同程度の繰越金が生じていたため,それを引き継ぐ形となった. 10万円程度であるから,国内の出張旅費または研究に必要な計算機周辺機器・ソフトの購入等に有効に活用したい.
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Research Products
(4 results)