2014 Fiscal Year Research-status Report
共形場理論による非自明な背景上の超弦理論の解析とその素粒子模型への応用
Project/Area Number |
23540322
|
Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
菅原 祐二 立命館大学, 理工学部, 教授 (70291333)
|
Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2016-03-31
|
Keywords | 共形場理論 / 超弦理論 / mock modular form / 数理物理学 / 素粒子物理学 |
Outline of Annual Research Achievements |
2次元の共形場理論ではコンパクトなターゲット空間を持つ非線形シグマ模型は既に詳しく研究されているが,非コンパクトでかつ非自明なターゲット空間を持つ理論については未解決問題も多く,超弦理論の背景場としても重要である。本研究課題における主要なテーマは,こうした非コンパクトあるいは特異性を持った非自明な背景上の超弦理論の物理的・数理的性質を解明することであり,更には深く関連する非有理共形場理論の詳細な研究を目指している。 平成26年度は,非コンパクトな超共形場理論における指標の「modular completion」に関する一連の研究において,modular completionを表すポアンカレ級数と類似した簡明な公式を得た。この公式によって,modular completionのスペクトラル・フローのふるまい,及びmodular変換性が最も明白な形で表現されており,主要な結果を論文として発表した。更に,トーラス分配関数及び楕円種数の経路積分による評価に基づき,ここで得られた「非コンパクト・ポアンカレ級数」の物理的な起源を明らかにした。 一方,interface CFTに基づき,非幾何学的背景を記述する共形場理論の新たなモデルを提案し,そのユニタリー性に関して詳細な研究を行った。我々が得た「unitarized model」は,明白にmodular不変であるが,通常の意味でのオービフォルドCFTの枠組みでは表すことができず,新しいタイプの非幾何学的背景を記述する共形場理論とみなすことができる。本研究結果については,年度末に論文発表を行い,現在査読誌に投稿中である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題における主要なテーマは,非自明な背景の超弦理論の物理的・数理的性質を世界面上の共形場理論の見地から解明することである。26年度は「研究実績の概要」で述べたような成果をあげており,それに基づいて国際会議を含む幾つかの研究会において招待講演を行い,また日本物理学会において一般講演を行っている。未だ論文発表として結実していない研究成果も残されており,その点が課題として挙げられるものの,課題研究の進捗状況としては概ね順調であると考えている。
|
Strategy for Future Research Activity |
引き続き非コンパクトな超共形場理論と非幾何学的背景上の弦理論の研究が中心テーマとなる。今年度進展があった非有理超共形場理論におけるmodular completionの研究を発展させるとともに,数理物理的観点からの発展として,small及びlarge N=4,更にN=3超共形代数の指標のmodular completionの経路積分に基づく物理的解釈を確立することが重要であると考えている。そしてゲプナー構成等の超弦理論のコンパクト化や,modular completionに基づく非正則ヤコビ型式の代数構造の詳細な研究を行うことを目指す。 非幾何学的背景上の弦理論の研究については,超弦理論のコンパクト化への応用を視野に入れ,26年度に研究したinterface CFTに基づくモデルの更なる拡張や,その低エネルギー有効理論の物理的な性質の研究に取り組みたい。更に,非対称オービフォルドを用いた超弦理論のコンパクト化のモデルを解析し,いわゆる「宇宙定数問題」に対する新たな知見を得たいと考えている。
|
Causes of Carryover |
26年度はほぼ計画通りの額の研究費を使用し,更に25年度の繰越金を一部消化することができたが,物品費に予想よりも経費がかからなかったため,まだ8万円程度の繰越金を残すこととなった。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
8万円程度であるから,研究に必要な計算機周辺機器・ソフトの購入,また専門書の購入等で有効に活用したい。
|
Research Products
(6 results)