2011 Fiscal Year Research-status Report
次世代計算機・観測から迫る高エネルギー爆発天体現象の理論的解明
Project/Area Number |
23540323
|
Research Institution | National Astronomical Observatory of Japan |
Principal Investigator |
固武 慶 国立天文台, 理論研究部, 助教 (20435506)
|
Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
|
Keywords | 超新星 / ガンマ線バースト / 重力波 / ニュートリノ / 強磁場 |
Research Abstract |
初年度に得られた成果を以下の箇条書きでまとめたい。1. 空間3次元、ニュートリノ位相空間1次元の合計4次元の数値シミュレーションを世界に先駆けて実行し、11太陽質量の星がニュートリノ加熱メカニズムで爆発することを突き止めた。従来の系の軸対称性を仮定した空間2次元シミュレーションに比べ、非軸対称方向における対流・流体不安定性の発達により、ニュートリノによるエネルギー輸送効率が向上することから、爆発を再現するためには3次元シミュレーションが不可欠であることを指摘することができた。2. 超新星爆発の3次元輻射流体シミュレーションに基づき、爆発時に放射される重力波形を評価・詳細に解析した。自転の効果によって、星の水平面方向に非軸対称モードが発達し、このモードに伴って密度・温度が上昇するため、ニュートリノの放射としては、星の自転軸から見たときが最大となることが分かった。さらにこのニュートリノ放射の非対称性が作る重力波が強度としてもっとも強く、その観測には日本で計画されている干渉計DECIGOが不可欠であることも指摘できた。3. 素粒子研究者の間で話題となっていたニュートリノの自己相互作用の効果を実験的に超新星数値シミュレーションに取り入れ、実際に超新星の爆発に効くような振動パラメータに制限を与えた。より首尾一貫した定式化に向けて、一つの方向性を与えた研究成果であると考えている。4. 超新星爆発の理論モデル研究の最前線について、依頼されレビュー論文を執筆した。まさにこの研究課題のテーマである「数値計算から予言される観測予測とさらに先進の観測から理論にフィードバックを方向性」を追求した内容で、初年度にこの成果をレビューできたのはタイムリーであったと考えている。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
上記の「研究実績の概要」の(1-4)に対応して、その達成度について述べてゆく1.このテーマは交付申請書に記載した「多次元輻射磁気流体シミュレーションに基づく爆発メカニズムの解明」に対応している。多次元のニュートリノ輻射輸送は、ニュートリノがフェルミ粒子であることからブロッキングの効果を考慮する必要があり、著しく輻射輸送方程式が非線形になること、さらにニュートリノ反応にはエネルギー依存性、さらにはエネルギー・角度方向にも輸送があることから、非常に計算コストが高いことが知られている。申請者らは光線独立法と呼ばれる巧妙な近似法を用いながら、超大規模並列計算機において高い並列化率を誇る数値計算法を開発することができた。初年度の達成度としては当初の計画以上のものである。2.星の自転の効果を考慮しない場合、超新星の爆発はカオス的に成長する流体不安定性が引き金となっておこるため、爆発の非対称性さらにはその非対称性を記録する重力波の波形にも特徴的なシグナルをとらえることは非常に難しいと考えられていた。一方で、自転の効果で系に特別な方向「自転軸」が与えられ、対称性が破られる。この対称性の破れと重力波放射の起源を関係づけたアイデアは、独創性の高いものとして評価されている。すでにニュートリノ起源の重力波公式の定式化をすませていたため、このようにいち早く成果を得られたものと考えている。3.超新星の爆発に効くようなニュートリノ自己相互作用のパラメータ領域はどのようなものか?シミュレーション研究の特色を生かして、上記の問題を素粒子物理への逆問題として捉えた視点がユニークであると考えている。上記のテーマは当初予期していなかったら、新機軸の研究成果である。
|
Strategy for Future Research Activity |
1.上述の空間3次元、ニュートリノ位相空間1次元の合計4次元の数値シミュレーションを実行し、爆発ダイナミクスの親星依存性について調べる計画である。具体的には、初年度調べた11太陽質量の星に加え、8.8太陽質量、15太陽質量の星までその重力崩壊・バウンス・ショック失速・ニュートリノ駆動爆発まで首尾一貫した数値シミュレーションを行いたいと考えている。特に8.8太陽質量の星は中心核が酸素・ネオン・マグネシウムで形成されており、かに星雲の超新星の親星との相関も指摘されていることから、非常に興味深いケースであると考えている。従来の研究のノウハウを生かし、重力波・ニュートリノ放射・爆発的元素合成など投網式に研究を実行していきたい。2.上記に述べたような爆発後に中性子星に加え、もっと親星の質量が重い場合・爆発後にブラックホールを形成するような超新星のダイナミクスも明らかにしてゆきたい。この場合、一般相対論的な数値コードの開発が不可欠である。すでに近似的なニュートリノ輻射計算まで含む一般相対論的流体コードの作成を済ませてある。今年度はエネルギー空間での輸送まで含めた一般相対論的ニュートリノ輸送コードにまで拡張する計画である。そうすることで、ブラックホール形成・降着円盤形成・ニュートリノ加熱・ブラックホールの磁場の抜き取りによるアウトフローの形成において、降着円盤の形成まで明らかにすることを計画している。まずは国立天文台にあるスーパーコンピュータで数値コードの並列化効率を高め、その後「京」を見据えた超大規模計算機での計算実行を目指していく。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
初年度のワークステーションを購入させていただいたため、計算結果のデータ解析に十分な設備が整った。また初年度は海外出張費を抑えることが出来たため、5万円程度の余剰が出た。次年度の旅費にあてる計画である。次年度以降は、国際会議発表などに研究費を使わせていただきたい。すでに6月にはタヒチ島で行われる国際会議(30万)相当、6月で中国で行われる国際会議(15万円)相当、7月ストックホルムで行われる国際会議(40万)相当、7月シアトルで行われる国際会議(30万)に参加が確定しており、本科研費の成果を国際会議で発表する計画である。
|
Research Products
(14 results)