2011 Fiscal Year Research-status Report
次世代大規模宇宙探査に向けた広域重力レンズ光伝搬数値実験技法の開発
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23540324
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Research Institution | National Astronomical Observatory of Japan |
Principal Investigator |
浜名 崇 国立天文台, 理論研究部, 助教 (70399301)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 観測的宇宙論 |
Research Abstract |
平成23年度の主な研究実績は、(1)広域重力レンズray-tracing技法の検討、および(2)広域重力レンズray-traceのための宇宙論的体積N体シミュレーションデータの作成、の2点である。(1)新規に開発する重力レンズray-tracing技法として下記の2つの方法論の比較検討を行った。(A)従来の技法で用いられている多重レンズ面近似を応用し、ただし広域にわたる重力レンズray-traceを実現するために、従来用いられていた平面レンズ面近似を用いるのではなく、球面レンズ面近似を導入する。(B)多重レンズ面近似を用いずに、直接的に3次元重力ポテンシャルを求めて、光の伝搬の基礎方程式である null 測地線方程式(光の運動方程式)と、微小光束断面積の伝搬に伴う発展方程式である測地線偏差方程式を出来るだけ直接的に解く。検討の結果、原理的には両者とも可能であるが、さしあたっては従来の技法が応用できる前者を採用することとした。この方法論中での基礎技術である球面データの球面調和関数展開等の計算ライブラリーの整備を行った。(2)広域重力レンズray-traceのための宇宙論的体積N体シミュレーションデータの作成を行った。これに先立ちN体計算用の計算機を購入し必要なソフトウエアーの導入と整備をおこなった。N体シミュレーションソフト「Gadget」を用いて200メガパーセクから2400目がパーセクに渡る複数の宇宙論的体積N体シミュレーションデータを行った。今回制作したデータは試験用の粒子数が少ないもので、本計算のためのデータは次年度に作成する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在まで(A)広域重力レンズray-tracing技法の検討、および(B)広域重力レンズray-traceのための宇宙論的体積N体シミュレーションデータの作成、の2点についておおむね当初の予定通りに研究を実施する事が出来た。(A)新規に開発する重力レンズray-tracing技法として2つの候補の比較検討を行い、採用する技法を確定し、その方法論中での基礎技術の開発・整備を実施した。また(B)広域重力レンズray-traceのための宇宙論的体積N体シミュレーションデータの作成を行った。N体計算用の計算機の導入と整備を行い。N体シミュレーションを実施しテスト用のデータセットを作成した。
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Strategy for Future Research Activity |
第一に広域重力レンズray-tracing技法の開発をすすめ、その実装とテストを行う。テスト計算は、平成23年度に作成した宇宙論的体積N体シミュレーションデータを用いる。テストが完了し次第、(C)広域重力レンズray-tracingシミュレーションを本格的に実施する。この計算のために現在の宇宙論的体積N体シミュレーションデータより多くの粒子を用いたN体シミュレーションを行う。この計算は国立天文台等で共同利用に提供している大型計算機資源を利用する。広域シミュレーションになったことにより生成されるデータセットのサイズも膨大になるので、その後の利用に便利なデータフォーマットを策定し、データ読み込み及び可視化のソフトウエアーも整備する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
予定していた海外での研究打ち合わせが次年度以降に延期されたためそのための旅費を繰り越した。次年度における研究費の私用計画の主な物は以下である。設備備品として、シミュレーションデータを保存するための大容量外付記憶装置を購入する。また国内および国外での研究打ち合わせ、および研究成果発表のための旅費を支出する。
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