2012 Fiscal Year Research-status Report
次世代大規模宇宙探査に向けた広域重力レンズ光伝搬数値実験技法の開発
Project/Area Number |
23540324
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Research Institution | National Astronomical Observatory of Japan |
Principal Investigator |
浜名 崇 国立天文台, 理論研究部, 助教 (70399301)
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Keywords | 観測的宇宙論 |
Research Abstract |
今年度の主要な実績は、全天シミュレーションまで可能な重力レンズray-tracing技法を開発しその数値シミュレーションへの実装を完成させたことである。全天重力レンズシミュレーションは、大規模深銀河可視撮像計画(例えば、1、2014年より観測開始予定のすばる望遠鏡次期主焦点カメラHyperSuprimeCamによる1千5百平方度サーベイ、2、2014年より観測開始予定のLarge Synoptic Survey Telescopeによる2万平方度サーベイ)や、宇宙背景輻射の偏光観測プロジェクトを推進する上で必須の研究手段である。前者の主要科学目的の一つは、大規模構造による重力レンズ効果を用いた宇宙進化史の解明であり、後者のそれは、宇宙背景放射のBモード偏光のスペクトラムからインフレーションの物理機構を探るものであるが、そのさい宇宙背景放射が手前の構造から 重力レンズ効果を受ける事により引き起こされるBモード偏光(これは従ってインフレーション起源ではない)を正確に補正する技術が重要となる。両者とも現在の宇宙物理学の重要テーマであり、全天シミュレーション技術はその研究推進における重要なツールである。 作成した数値シミュレーションのテストを行った。宇宙論的体積のN体シミュレーションをGadget-2という公開されているN体シミュレーションプログラムを用いて1024の3乗個の粒子のシミュレーションを実施し、宇宙の大規模構造を作成した。その大規模構造データを用いて重力レンズシミュレーションを行い精度の確認をし、期待される計算精度が達成されていることを確認した。これにより来年度、国立天文台および筑波大学の共同利用大型計算機を用いて実施することを予定している、さらに大規模な数値シミュレーションの準備が整った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題において最主要な開発要素であった、全天シミュレーション重力レンズray-tracing技法の開発とその数値シミュレーションへの実装が完成し、そのテスト計算を行い予定されていた性能が達成されていることが確認出来た。これにより次年度には、本研究課題の主要目的であった高精度シミュレーションを大型計算機を用いて実施することが可能になった。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、今年度完成させた全天シミュレーション重力レンズray-tracing数値シミュレーションプログラムを用いて、高精度シミュレーションを実施する。計算は国立天文台および筑波大学の共同利用大型計算機を用いて実施することを予定している。シミュレーションが完成ししだい、シミュレーションデータを用いて、重力レンズ現象に関連する宇宙論研究を推進して行く。研究会等において研究成果報告を行い、また国内外の研究者にデータを利用してもらうよう呼びかける予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度は、今年度完成させた全天シミュレーション重力レンズray-tracing数値シミュレーションプログラムを用いて、高精度シミュレーションを実施する。シミュレーションデータ解析のための計算機環境を整備するために物品費として研究費を使用する。また、シミュレーションが完成ししだい、シミュレーションデータを用いて、重力レンズ現象に関連する宇宙論研究を推進する。国内外の研究会等に参加し、研究成果報告および国内外の研究者との情報交換を行う。そのための旅費として研究費を使用する。なお平成24年に予定していた研究打ち合わせのための国外研究機関訪問が日程の都合により延期され残額が生じたが、これを次年度において行う。
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