2013 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23540329
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Research Institution | High Energy Accelerator Research Organization |
Principal Investigator |
磯 暁 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 素粒子原子核研究所, 教授 (20242092)
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Keywords | ドジッター宇宙 / 量子揺らぎ / ホライズン / 暗黒エネルギー |
Research Abstract |
時空の地平面に付随する量子効果として、ブラックホールのホーキング輻射とドジッター時空での量子生成があげられる。今年度は、ドジッター時空での量子生成でつくられた揺らぎが現在の宇宙までどのように時間発展するのかを調べた。特にミニマル結合をするスカラー場を考え、ドジッター宇宙から輻射優勢、物質優勢へと続く宇宙の歴史の中で、ドジッター宇宙で生成された量子場の揺らぎのつくるエネルギー運動量テンソルの時間発展を詳細に計算した。この結果、圧力とエネルギー密度の比wが、輻射優勢期の初期は w=-1/3となること、後期にw=1/3へ漸近し、さらに物質優勢期にはw =0へ漸近していくことがわかった。また、通常のインフレーションの前に、プランクスケールのハップルパラメータをもつプレインフレーションがあったとすると、ビッグバン直後から w=-1/3に従ってエネルギー密度が増大し、今の宇宙ではほぼ臨界エネルギー密度に近い値まで増大することがわかった。 この計算に重力相互作用の効果を取り入れると、重力相互作用が引力であることを反映して、wが -1/3よりも小さくなり、現在の暗黒エネルギーの候補となりうる可能性がでてくる。これは来年度の重要なテーマの一つである。この研究は、これまでの平衡場の量子論では計算することができず、カダノフベイム方程式などの非平衡場の量子論の手法が重要となる。 上記の研究と平行して、非平衡場の量子論のKadanoff-Baym方程式をレプトン生成に適用し、右巻きニュートリノの質量が縮退している場合のレプトン数生成量を計算した。ここで得られた手法(Kadanoff-Baym方程式の解き方と、そこから密度行列の時間発展方程式を導く手法)は、ドジッター宇宙で生成された量子揺らぎの時間発展に応用できる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初は、地平面のある時空としてブラックホールを中心に考え、その地平面での量子揺らぎを非平衡的に解析を進めていた。その後、研究を進めて行くうちに、ブラックホール時空だけでなく、ドジッター宇宙の地平面で生成される量子揺らぎの時間発展を解くことで、現在の暗黒エネルギーの謎を解く鍵が得られることがわかってきた。今年度は、自由場を中心に解析を進めたが、相互作用を取り入れて非平衡な場の量子論の方程式を解くことによって、本当に暗黒エネルギー問題へ迫る可能性がでており、当初の計画を超えて研究が進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
来年度は、まず重力相互作用の効果を取り入れて、生成された量子揺らぎがつくる圧力や、それに伴ってエネルギー運動量テンソルの時間発展がどのように変わるのかを見る。重力相互作用は引力なので、新たな負圧力が加算されることが期待される。その結果、プレインフレーションで生成された量子揺らぎがw<-1/3となって現在の暗黒エネルギーを説明可能かの計算を行う。また重力相互作用によりスカラー場の量子揺らぎがボーズ凝縮を起こす可能性についても考えて行く。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
昨年度に予定していた海外出張と共同研究のための海外からの研究者招聘が延期になったため 昨年度に行けなかった海外への研究成果報告と海外研究者との共同研究のための旅費に使用する
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Research Products
(3 results)