2015 Fiscal Year Research-status Report
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23540329
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Research Institution | High Energy Accelerator Research Organization |
Principal Investigator |
磯 暁 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 素粒子原子核研究所, 教授 (20242092)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2017-03-31
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Keywords | 非平衡場の量子論 / プレヒーティング / インフレーション |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、非平衡場の量子論の手法を使って、宇宙に現れる様々な地平面近傍における場の量子論の真空の振舞いを調べることにある。特に、ブラックホールからのホーキング輻射、ドジッター宇宙の地平面効果による揺らぎの成長と暗黒エネルギーとの結びつき、インフレーション後の非摂動的な熱化の物理、などが挙げられる。昨年度は、ハッブル程度の軽い質量をもつ粒子がドジッター期に獲得した揺らぎがその後の宇宙でどのように成長するかの解析を行った。今年度はそれを更に押し進め、その粒子の自己相互作用の効果の解析、及び我々の宇宙がより大きなハッブルパラメータをもつドジッター宇宙の中の泡として埋め込まれている宇宙(イターナル宇宙)において、外側のドジッター時空が私たちの暗黒エネルギーとして寄与する可能性を探索した。 それに加え、インフレーション後の非摂動的熱化であるプレヒーティングを使うことで、small field inflation (SFI)における初期状態の不自然さがダイナミカルに解決できる可能性を明らかにした。これはコールマンワインバーグ型のポテンシャルをもつスカラー場の理論で自然に現在の宇宙マイクロ波輻射の揺らぎを説明できる可能性を保証し、これまで主流だった Large Field inflationと並んで、SFIも有力な宇宙模型の候補となることを表している。 また反Dブレーンの周りを私たちの宇宙であるD3ブレーンが公転する宇宙を考えることで、ヒッグス場の真空期待値が(プランクスケールなどの巨大スケールと比較して)安定化することを示した。これもまた時間に依存する解を考えることの重要性を表している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
非平衡場の量子論の手法が、当初予想していた系を越えて、暗黒エネルギー、共鳴レプトン生成、インフレーション後の再熱化、さらにはヒッグス粒子の安定性にまで重要であることが明らかになり、研究の広がりがどんどんと出てきている。
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Strategy for Future Research Activity |
非平衡場の量子論の手法を駆使して、宇宙や素粒子物理学の基本問題に取組んで行く。特に、暗黒エネルギーの性質を宇宙の発展の歴史の流れで捉えること(相互作用の効果について更に解析を行う)、インフレーション後の再熱化を使ったSmall field inflationの研究を多成分スカラー場に拡張して非ガウス性などの観測量の計算を行うこと、公転するDブレーンの時間依存するダイナミクスの詳細な解析(特にスペクトルの導出とローレンツ不変性の破れの大きさの評価、そこから導かれるバリオン非対称性の可能性など)を行う予定である。
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Causes of Carryover |
昨年度予定していた海外出張が中止、及び先方からの支出による旅行になり、当初予定していた使用額に満たなかったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
研究打合せおよび研究発表のための(海外、国内)旅費として使用する予定
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Research Products
(5 results)