2013 Fiscal Year Research-status Report
超対称性理論の非摂動論的定式化と数値シミュレーション
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23540330
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
鈴木 博 九州大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (90250977)
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Keywords | 格子ゲージ理論 / 時空対称性 / 並進対称性 / エネルギー運動量テンソル / 保存則 |
Research Abstract |
当該年度は、超対称性を含む時空対称性を場の理論の非摂動論的定式化において如何に実現するかという問題意識のもとに研究を進めた。具体的な成果としては、並進対称性に付随したネーターカレントである、エネルギー運動量テンソルを格子ゲージ理論において如何に構成するか、という問題を追求した。並進対称性は場の理論の基本的な対称性であるが、場の理論の非摂動論的定式化である格子正則化はこの対称性を陽に壊すため、そこでのエネルギー運動量テンソルの構成は自明ではない。また並進対称性は超対称性代数の中にも含まれ、超対称性理論の格子による非摂動論的定式化の困難は正に並進対称性の破れの結果とみなすことができる。我々は、この問題に対する全く新しいアプローチとして、Yang-Mills gradient flowという概念に注目した。Yang-Mills gradient flowとは、Yang-Mills作用の関数空間でのgradientであるYang-Mills場の方程式に従ってゲージ場の配位をflowさせるものである。実はこのようにflowされたゲージ場から作られた局所演算子積は繰り込まれた有限な演算子になることが知られている。こうした有限な演算子は正則化の方法に寄らないはずで、そのためにこのgradient flowを利用することで、異なった正則化における複合演算子の間を関係づけられる可能性が出てくる。我々はこの可能性に注目し、並進対称性を保つ次元正則化におけるエネルギー運動量テンソルと格子正則化におけるある種の局所積を関係づけることで、格子の連続極限で正しく規格化され保存するエネルギー運動量テンソルの構成を与えることに成功した。この構成法はその後Yang-Millsゲージ理論の熱力学に応用され、従来の方法で得られていた値を再現することが示され、ここでの議論の正しさを裏付ける結果を与えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当該年度に精力的に研究したエネルギー運動量テンソルは場の理論における極めて基本的な物理量であり、場の理論の非摂動論的定式化におけるその簡便な構成法は今後幅広い応用を持つと期待される。またここでのものと同様なアイデアは、超対称性など格子正則化と相性が悪い他の対称性についても適用できると期待される。
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Strategy for Future Research Activity |
我々が行った、格子ゲージ理論におけるgradient flowによるエネルギー運動量テンソルの構成法は、当初pure Yang-Millsゲージ理論だけに対するものであった。一方、超対称性理論やコンフォーマル理論などの興味深い理論を構成するには、フェルミオンの自由度の存在が基本的である。我々は、ごく最近、フェルミオンを含むベクトル型ゲージ理論に対してどのように我々の当初の構成法を一般化すればよいかを明らかにした。今後は、このフェルミオンを含んだ系でのエネルギー運動量テンソル、超対称カレントなどの構成法とその性質の非摂動論的解析を、数値シミュレーションと解析的手法を合わせ使うことで行う予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
来年度の研究のために確保した。 文房具類の購入に使用する
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