2014 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
23540331
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
仁尾 真紀子 独立行政法人理化学研究所, 仁科加速器研究センター, 仁科センター研究員 (80283927)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2015-03-31
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Keywords | 量子電気力学 / 異常磁気能率 / 電子 / ミュー粒子 / 国際研究者交流(米国) |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、電子およびミュー粒子の持つ異常磁気能率(g-2)への寄与のうち量子電気力学(Quantum Electrodynamics, QED)による効果を数値計算によって求めた。g-2へのQEDへの寄与は、QEDの結合定数である微細構造定数αを展開パラメタとした摂動計算によって効率よく求められることが1940年代から知られている。 一方、実験においては電子のg-2はハーバード大学において2008年に最新の測定が行われ、さらに陽電子による実験の準備が現在も進行中である。ミュー粒子のg-2は、2002年に米国ブルックヘブン研究所で測定された値が、現在の最新のものである。しかし、2016年頃に結果を得ることを目標に、米国のフェルミ研究所と日本のJ-PARCと2カ所で独立なミュー粒子g-2の測定実験が進行中である。 電子およびミュー粒子においてg-2の値を理論と実験ともに高い精度で求め、両者が一致、あるいは乖離するかどうかを確認することが、g-2に関わるすべての研究者の目標である。これは現在の物理学が正しいか否かの精密検証であり、さらには新しい物理学への扉を開くことになると期待されている。 本研究では、以上の目的に沿い、電子およびミュー粒子のg-2へのQEDの寄与を、実験の精度を念頭に置き、望まれる精度まで計算することを行った。具体的には、それぞれ摂動計算の8次と10次の値を決定することである。特に10次は12672個のファインマン図から構成されており、数値計算プログラムの自動生成を行い、できあがったプログラムをスーパーコンピュータ上で数値的評価を行うという方法で計算を行った。10次すべての計算の概算値は2012年に得ることができ、さらにプログラムを理研のスパコンRICC専用にチューニングし高速化することで、2014年末にはより精度と信頼性の高い値を報告することができた。
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